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異種楽器対談 第9回、第10回

異種楽器対談

オーケストラのプレーヤーは大のお話好きです。楽屋、居酒屋、はたまた本番中のステージで(あ、これは聞かなかったことにしてください。)おしゃべりに夢中です。特に楽しいのは楽器のウンチク。ちょっとのぞいてみましょうか。プレーヤーならではのお話が聞けそうです。なかには少しあやしいものもあるようですが・・・

第9回、第10回 コントラバスの黒江浩幸さん、ヴァイオリンの山本高史さん

────コントラバスの黒江浩幸さんが、ヴァイオリンの山本高史さんになにやら尋ねています。────
──(黒江)一番知りたいのはヴァイオリンの起源。やっぱりギターから来ているの?
 (山本)ちょっと調べたんですけど、そのとおりギターから来てるんですって。
──あ、ほんとに、当たってるねー。
 ギターの前に、またちょっと違う楽器があって、そこからスペインのギターにいって、そっからイタリアにいって。
──ヴァイオリンになったの?
 ヴァイオリンの前にヴィオール属のヴィオラ・ダ・ガンバとヴィオラ・ダ・ブラッチョっていうのになって。
──ブラッチョ!ははは、グラッチェみたいだ。
 ドイツ語でブラッチェって言うでしょう、ヴィオラのこと。
──あ、言う言う! そうだ、そうだ!
 イタリア語だとブラッチョで、腕っていう意味なんですって。で、ガンバっていうのは足って意味なんですって。
──へ~っ! これは勉強になるなぁー。
 ヴィオラ・ダ・ガンバっていうのが、チェロとコントラバスになっていって、ヴィオラ・ダ・ブラッチョっていうのが、ヴィオラ、ヴァイオリンに進んでいったそうです。それが300年くらい前の1600年くらいの時期にヴァイオリン属として出来たらしいです。ヴィオラ・ダ・ガンバはギターと一緒でフレットも付いてるし、裏板が平らなんですって。その辺はやっぱりギターから来てるんじゃないかと。
──ギターをこう上に持ってっちゃったんだ。
 はじいていたのが擦れるようになった。
──ギターのままだと擦れないもんね。
 そこから2つに分かれたんでしょうね。手で持つ派と足で挟む派に分かれて。
──なるほどねー。
ところで、オーケストラの中でいい場所に座ってるよね。周りの音全部聴こえてきて。
 僕ととなりの人とは聴こえ方違うんですよ。僕はファースト・ヴァイオリンがよく聴こえるし、となりの人はチェロがよく聴こえるんです。
──たまに対向配置にするよね。そうするとコントラバスってヴァイオリンの方にくるじゃない。そうすると全然聴こえ方違うもんね。
目の前の音が聴こえるってことですか。
──うそー、この人この人って感じで聴こえる。いつもの場所だとチェロがこの人この人って感じで聴こえる。普段ヴァイオリンの音はヴァイオリンって合体の音で聴いてるわけ。コントラバスだって向こう側で聴いたら固まりで、なんだかゴーゴー唸ってるって感じでしょ?
 そう…いう感じです…(笑)ゴーッて。
──ためらったね。(笑)こんど席交換してみる?
 一回やってみたいですね。
──かなり面白いと思うよ。えっ、こんな中で合わせてんの!とかって。
ところで、歴史好きって聞いたんだけど。
 はい。ずいぶん前ですけど、正倉院展見に行きました。
──どこに。
 奈良の国立博物館。その年その年でテーマがあるんですよ。楽器関係とか書物関係とか。
――自分も歴史好きなんだけど、歴史の流れが好き。でも楽器は見てみたいね。
 琵琶見ましたよ。
──あー。よく教科書に載ってるよね。本物見たんだ。
 そうそう。見ました。感動しましたよー。教科書と一緒だーって。(笑)教科書にはあんな小さくしか載ってないけど、本物はけっこうでかいです。
──そんなにでかいの。へ~、写真じゃわからないものなー。
──フランスの作曲家ってコンチェルト書いてないよね。
 無い人は無いですね。あるけど未完成だったり、小品だったり。一概にコンチェルトに興味が無かったっていうわけではないんだけど、ヴァイオリンのコンチェルトを書いた人がフランスにはあまりいない。サン=サンーンスくらいですかね。3つ書いてますね。
──一番有名なのってあれ何番?
 3番。ダラッタラーン。ダララランダラララン。
──あれ3番かぁ。じゃその前に1、2番があるんだ。あんまりやらないから知られてないよね。
 フォーレとかも未完だったり、ミヨーも書いてるんですよ。けっこうたくさん。でも知らないんですよね。聞いたことがない。
──普通知らないよねぇミヨー。知ってたらオタク。
 あとなんだろ。探せば結構ありますよ。ドビュッシーは書いてないですね。コンチェルト自体書いたのかなぁ。ビゼーも書かなかったし。あっ、ラロは書いてますね。
──興味あるなしってあるんだろうね。
 その時代の流れとかも。
──でもコンチェルトって形式は昔からあるから。全然聴いてない訳じゃないはずなんだよ、どの作曲家も。でも書かなかったってことは興味が無い。
 ある楽器で書くのがね。ラヴェルなんかはピアノコンチェルト書いてるでしょう。でもヴァイオリンは書いてないんですよ。
──なんかラヴェルの気持ちはちょっと分かるね。けだるい和音とか出てくるじゃない。それってピアノだから出来るっていうのあるよね。
 楽器の特徴知って、これで書いてみようと思わないと。ラヴェルはヴァイオリンではそう思わなかったということだなぁ。あ、でも凄いの作ってるよ(ツィガーヌ)。
──あっ、本当だ。サン=サンサーンスやラヴェルの周りにヴァイオリンを上手に弾ける人がいたんじゃない。難しいんでしょ?
 難しい。難しい。
──作曲家はどんな楽器のお友達がいるかって大きいよね。
 大きいかも知れない。ベートーヴェンだってこの人に弾いて欲しいっていうので作ってるのありますからね。
──ドビュッシーにはヴァイオリン弾きの友達いなかったね、たぶん。(笑)
 でもソナタはきれいなの書いてますよ。コンチェルトはないけど。
──じゃあいたのか、お友達。
 コンチェルトというものに興味が無かったということでしょうね。
──形式張ったように感じるのかなぁ。シンフォニーもないもんね。そういうのに縛られたくなかったんだろうね。
さて、では逆にヴァイオリンコンチェルトの話を。4大コンチェルトって言うじゃない。
 ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーン、チャイコフスキー。
──ブルッフは入ってないのかぁ。
 もちろんあれも名曲ですけどね。
──けっこう演奏会でやらない?
 ヴァイオリニストなら必ずやる曲ですよ。で、かちっと曲の形が出来てるから。でも演奏会でよく取り上げられるのは短いっていうのもあるんです。(笑)
──他の曲は長い?
 ベートーヴェンは長い。30分じゃ終わらないんじゃないかなぁ。チャイコフスキーも長いし、ブラームスも長いですね。メンデルスゾーンは短いかな。
──4つの中で難しいのは?ベートーヴェン?ブラームス?
 どれも難しい。
──メンデルスゾーンは中でも弾きやすいんじゃない。よくちびっ子弾くよね。
 技術的にはそうかも知れませんけど、でもきれいに弾くのは難しいんですよね。
──なかなかいないよね、きれいに弾く人。
 初っぱなから前奏なしですぐ弾きますから。唯一短調じゃないかな、メンデルスゾーンだけ。他はみんな長調ですよね。チャイコフスキーもニ長調ですね。
──ニ長調の曲って多いでしょ。弾きやすいの?
 開放弦にレが入ってるんで。あとはイ長調とかト長調も多いですね。シャープ1つ2つ3つっていうのがやっぱり多いですよ。その方が自然な運指出来ますし。
──それってコントラバスにもあるのよ。バスの場合下からミラレソで、ヴァイオリンの場合は上からミラレソでしょ。ニ長調の楽譜って一番楽かなあ。チェロとかはハ長調が多いでしょ。調弦違うから。
 なるほど。調弦の音から音楽を作って行くって感じでしょうね。
──作曲家は、曲をその楽器の調弦を含めた特性考えて作るってことだ。あ、わかった、それ考えるの面倒くさかったんだ、フランス人って。(笑)
 もっと色彩!雰囲気!って?
──調にとらわれたくなーい。とか。(笑)
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