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2019/08/9

特別演奏会「マイタウン・コンサートin岩沼」プログラムノート

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寺西 基之 (音楽評論家)

 

 

ベルリオーズ:歌劇『ベアトリスとベネディクト』序曲

 

19世紀フランスのロマン主義を代表する作曲家エクトル・ベルリオーズ(1803-69)は、従来のスタイルにこだわらない大胆な作風によってフランスの音楽界に革新をもたらした。オペラ『ベアトリスとベネディクト』は彼の最後の作品で、バーデン・バーデン音楽祭の新劇場建設にあたっての委嘱作品として、1860年から62年にかけて作曲されている。題材はシェイクスピアの喜劇《空騒ぎ》に基づいており、台本はベルリオーズ自身が作成した。若い頃からシェイクスピアに熱中していたベルリオーズは、この《空騒ぎ》のオペラ化を30歳になる以前から構想していたようだ。結局それが実現したのは晩年になったわけだが、ベルリオーズ独特の個性が打ち出されたユニークなオペラとなっている。本日取り上げられる序曲は、この喜劇的なオペラの内容を集約したともいえる生き生きとした曲で、オペラの大詰めのベアトリスとベネディクトの二重唱に現れる楽想や、劇中でベアトリスがベネディクトに対する愛を歌う旋律などが用いられている。

 

 

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47

 

フィンランドを代表する作曲家ジャン・シベリウス(1865-1957)は若い時期にはヴァイオリニストを目指したことがあっただけに、この楽器に特に精通していた。そのことはヴァイオリンの特性と美質を存分に生かしたこの協奏曲に如実に示されていよう。初期の代表作である有名な第2交響曲の完成2年後の1903年に作曲されたが、この時期から彼はより凝縮された様式による中期の作風を模索していくことになる。この協奏曲は、全体的には初期のロマン的な様式を土台としつつも、中期の彼のスタイルを先取りする面も現れており、その意味では過渡期の様式を示した作品といえるかもしれない。もともとの初稿はかなり名技的な華麗さが際立つものであったが、1904年の初演失敗を受け、1905年にシベリウスは大々的に改訂を施してそうした華麗な面を後退させ、一層緊密なまとまりを持った決定稿を作り上げた。ヴァイオリンの技巧性と北欧風の暗く神秘的な背景を作り出す細やかな管弦楽書法とが相俟って、渋いながらも独特の味わいを持つ作品となっている。

 

第1楽章(アレグロ・モデラート)は幻想的な趣を持つ長大な楽章。3つの主題を持つ自由なソナタ形式をとり、展開部にはヴァイオリン独奏の大規模なカデンツァが置かれている。第2楽章(アダージョ・ディ・モルト)は奥深い情調を持つ緩徐楽章。第3楽章(アレグロ・マ・ノン・トロッポ)は民俗舞曲風のエネルギーに満ちた自由なロンドで、鮮やかなクライマックスを築く。

 

 

ムソルグスキー/ラヴェル編曲:組曲『展覧会の絵』

 

ロシア民族主義の作曲家モデスト・ムソルグスキー(1839-81)の代表作であるこの『展覧会の絵』はもともと1874年にピアノ曲として作曲された。きっかけは前年に死去した友人の画家ガルトマン(西欧風にはハルトマン)の回顧展にあった。ムソルグスキーは、そこに出品された絵やスケッチに霊感を得て、そこから自由に想像力を翔かせてこの曲を書き上げたのである。ロシア風の野趣に富む力強い筆致という点で、いかにもムソルグスキーらしい作品である。

 

このピアノ曲を1922年に管弦楽用に編曲したのがフランスの作曲家モーリス・ラヴェル(1875-1937)であった。その洗練された管弦楽法による色彩感豊かな編曲は、原曲のロシア的な魅力とはやや性格の異なるものになっているともいえようが、近代オーケストラの機能を見事に生かしている点でまさに名編曲であり、それゆえオーケストラの代表的なレパートリー曲として盛んに演奏されている。

 

曲は展覧会場を歩く様子を描く「プロムナード」で始まる。この主題は以後も循環的に現れ、全体を統一する役割を果たす。第1曲「グノームス」は侏儒が不器用に動く様を表現する。再び「プロムナード」が現れた後、中世の吟遊詩人の物悲しい歌(サキソフォーン)を表す第2曲「古城」が続く。またも「プロムナード」が挟まれた後、第3曲「テュイルリー」ではパリの公園での子供達の喧嘩の情景が軽快に描かれる。第4曲「ビドロ」はビドロ(ポーランドの牛車)が通り過ぎる情景の描写だが、その裏には虐げられた農奴の苦悩が表されている。悲しげな性格に変容した「プロムナード」が現れた後、戯画風の生き生きとした第5曲「殻をつけた雛の踊り」が続く。第6曲「ザムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」は金持ちのユダヤ人(弦と木管)と貧しいユダヤ人(トランペット)を描く。第7曲「リモージュの市場」は女達のお喋りで賑わう市場の様子。第8曲「カタコンベ、ローマ人の墓地」は暗い地下の墓地の情景で、そのまま“死者とともに死せる言葉で”と表記されたプロムナード主題に続く。第9曲「鶏の足の上に立つ小屋」では、臼に乗って荒々しく進むロシアの魔女ババ・ヤガーが迫真的に表現される。最後はガルトマンがキエフ街門のためにスケッチした設計図に基づく終曲「キエフの大門」が壮麗に全曲を締め括る。

 

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