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2018/08/9

特別演奏会「マイタウンコンサート」プログラムノート

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寺西 基之(音楽評論家)

 

モーツァルト セレナード第13番 ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」  

 

セレナードという曲種は本来夜に恋人の家の窓の下で歌う恋の歌だったが、古典派時代には祝い事などの機会に器楽合奏で演奏される多楽章構成の曲種として発展した。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-91)も前半生のザルツブルク時代には様々な機会にそうしたセレナードを書いたが、この有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(彼自身の付けた題で“小さな夜の曲”の意)は、例外的に後半生のウィーン時代の所産(作曲は1787年)。いかなる機会のために書かれたかは不明だが、セレナードらしい明快さのうちにも円熟期の作らしい密度の高い洗練された作風を示している。

 

第1楽章(アレグロ)はおなじみの堂々たる主題で始まるソナタ形式楽章。第2楽章(ロマンツェ、アンダンテ) は優美な緩徐楽章。第3楽章(メヌエット、アレグレット)は明朗なメヌエット。第4楽章(ロンド、アレグロ)は軽快に運ばれるフィナーレである。

 

 

モーツァルト
 オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンと管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調 K.297b
 

 

モーツァルトは前半生には生地ザルツブルクの宮廷音楽家として活動したが、制約の多い宮仕えに次第に嫌気がさすようになる。1777年秋から1779年初めにかけて長期にわたりマンハイムとパリへ旅行したのも、新しいポストを得ようとしたからだった。しかし才能ある彼を妬む現地の音楽家たちの妨害も絡んで就職口はみつからなかったばかりでなく、同行していた母が急死したり、失恋したりの散々な旅行となってしまった。しかしその間にも優れた作品を作る機会に恵まれ、特に1778年にはパリの公開演奏会のために交響曲第31番ニ長調K.297(いわゆる「パリ」交響曲)および管楽のための協奏交響曲変ホ長調が書かれている。このうち前者はパリで演奏されて大喝采を浴びたが、当時パリを訪れていたマンハイムの4人の管楽器の名手たちの演奏を想定して書かれたといわれる後者の協奏交響曲のほうはいかなる理由からか結局は演奏されず(当地の作曲家の陰謀が絡んだようだ)、やがて楽譜も失われてしまった。この失われた協奏曲はフルート、オーボエ、ホルン、ファゴットを独奏とするものだった。

 

その作品を改作したものではないかと考えられてきたのが、本日演奏されるオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットによる協奏交響曲である。これは19世紀半ばに楽譜が発見されたもので、以後モーツァルトの協奏交響曲として広く親しまれてきた。しかしパリで書いた協奏交響曲の改作であるという確証はなく、そればかりかモーツァルトの真作なのかどうかについての議論もまだ決着していない。ただ真の作者がモーツァルトであれ別人であれ、作品としては非常に優れており、モーツァルト作として演奏されてきたのもうなずけよう。

 

第1楽章(アレグロ)は堂々たる第1主題と叙情的な第2主題を持つ協奏的ソナタ形式をとり、各独奏楽器の音色の対比が生かされる。第2楽章(アダージョ)は情感豊かな緩徐楽章。第3楽章(アンダンティーノ・コン・ヴァリアツィオーニ)は民謡調の快活な主題に基づく変化溢れる変奏形式のフィナーレである。

 

 

ベートーヴェン 交響曲第7番 イ長調 作品92  

 

生涯通して新たな様式上の可能性を追求し続けたルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)は、交響曲のジャンルでも1曲ごと新しい作風を追求した。1811年の終りから翌年にかけて書かれた本日の第7番は、特にリズム的要素を活用している点が特徴的で、同一リズムの反復という手法を作品の主な構成原理とし、一定のリズム・パターンで曲を作り上げている。のちにワーグナーがこの曲を“舞踏の神格化”と評したのも、そうした反復リズムの持つ根源的な生命感に基づいた作品の性格をうまく言い当てている。

 

一方中期から後期への過渡期にあたるこの時期のベートーヴェンは、主題動機を綿密に展開することに重きを置いていた中期に比べ、旋律のカンタービレ的性格を重視するようになっていた。この交響曲にもその傾向が現れており、メロディの歌謡性を前面に押し出している。第7交響曲はこうしたカンタービレ重視とリズム的統一法の結び付きのうちに明朗な力強さを打ち出した傑作である。

 

第1楽章(ポーコ・ソステヌート~ヴィヴァーチェ)は充実した序奏の後、木管の付点リズムに導かれてソナタ形式の主部に入る。その付点リズムが楽章の統一要素となり、躍動感に満ちた展開を繰り広げていく。第2楽章(アレグレット)ではタータタ・ターターという行進曲風のリズム型が執拗に用いられるが、様々な書法によって気分の変化が巧みに作り出されているので、決して単調さに陥らない。第3楽章(プレスト)では、跳躍的なリズムによるスケルツォと、粘るようなリズムのトリオが交替する。第4楽章(アレグロ・コン・ブリオ)は、まさに舞踏の饗宴ともいうべき激しい力感に満ちたリズムで邁進していくフィナーレで、そのノリの良さと高揚感は19世紀初頭のロック音楽とでもいえそうだ。

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