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2018/01/18

パスカル・ヴェロ 特別インタビュー
第3回 絆~東日本大震災~

 前回お話を伺ったロシア公演は、東日本大震災で受けた支援への感謝を捧げるツアーでもありました。この未曾有の災害を体験した仙台フィルの指揮者として、ヴェロさんは何を感じ、何を思ったのでしょう。改めて、当時のお話を伺いました。

 

―仙台フィルの皆さんもひとりひとりはいわば被災者でもあったわけですが、震災後すぐに、避難所や公共施設での演奏を始められましたね。

  2011年5月2日 福島県新地町立福田小学校

 音楽家に選択の余地はありませんでした。できることは演奏することだったのです。もし美しいコンサートホールがあればそこで演奏しますが、なければどんなところでも演奏することはできますから。音楽家というのは、私が思うにとても繊細な人たちです。感受性が豊かで、喜びや痛みを深く感じています。どうやって癒すことができるだろうか、どうやって望みや将来への希望を取り戻してもらえるだろうか。その気持ちを持って、自分たちができる音楽という手段で、東北の皆さんに寄り添っていたのだと思います。


 

―インスペクターの我妻さんにお話を伺った際、「私たちは演奏させてもらうことで、また皆さんには演奏を聴くことによって活力を得て頂けたら…という、お互いに生きるための作業をしていた」と仰っていました。

 私が学生の頃ですが、チベット音楽を研究するため、チベットのザンスカールという土地に2か月滞在したことがあります。ある日コテージにいたところ、結婚の儀式のため、花嫁が暮らすこの村へ新郎が二人の音楽家を従えて迎えに来ました。一人はダマンという小さいティンパニのような楽器を、そしてもう一人はソルナというダブルリードの楽器を弾いていました。彼らは特にその村に属しているのでもなく、ただそのために来て演奏して飲んで酔っ払って、というのを続けるさすらいの演奏家だったんですね。私はそれを見て、それってひとつの音楽家の生き方なのかな、と思ったのです。家もなく、旅をして演奏をする。それはもしかしたら、震災当時の仙台フィルのメンバーの行動にも、つながるのかもしれません。音楽家は何か特別なものではなく、生活や社会と結びついている。社会がどのような状況でも存在し、また同様に西洋音楽もどのような状況でも存在し得るというのを感じました。それは脈々とあるもので、特別なものではないんです。だから災害が起こったときに自然と行動を起こしたのは音楽家の本質であって、音楽家とはそういう存在なのだと思います。

 

 この震災当時のお話を伺った際、ご自身のことは一切話題にしなかったヴェロさん。しかし震災後海外演奏家の来日キャンセルが相次ぐさなか、仙台フィルのメンバーとともに仙台市内で復興コンサートを行ったのは、他でもないヴェロさんでした。オーケストラや東北とのつながりを強く感じ、音楽という手段で自然と寄り添ったのは、楽員だけでなく、自身を指揮者であり「音楽家」と称するヴェロさんご本人だったのですね。

 


2011年6月25日 仙台トラストシティでの復興コンサート

(取材・構成:正木 裕美)

 

パスカル・ヴェロ 出演公演
第317回定期演奏会
 2018年3月16日(金)午後7時開演・17日(土)午後3時開演
 会場:日立システムズホール仙台・コンサートホール
 指揮:パスカル・ヴェロ  ピアノ:横山 幸雄*
  サティ:グノシエンヌ第1番*、第3番、第2番*・ジムノペディ第3番、第2番*、第1番
  ダンディ:フランスの山人の歌による交響曲 作品25*
  ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
  ラヴェル:ラ・ヴァルス
  ラヴェル:ボレロ

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