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2019/02/22

名曲のちから オーケストラ・スタンダードVol.23 <終了しました>プログラムノート

名曲のちから オーケストラ・スタンダードVol.23 公演情報はこちら→

柴田 克彦

 

 

チャイコフスキー:歌劇「エフゲニー・オネーギン」 作品24より ポロネーズ

本日は、19世紀ロシアの中心的な作曲家ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840−1893)のオペラ、協奏曲、交響曲を代表する名作が披露されます。

 

チャイコフスキーは、交響曲、バレエ等の管弦楽曲、協奏曲で知られていますが、実はオペラにも相当な力を注ぎました。「エフゲニー・オネーギン」(全3幕)は、10作にのぼる彼のオペラの中で、「スペードの女王」と並ぶ代表作。交響曲第4番やヴァイオリン協奏曲も書かれた充実期の1878年に完成された、通算5作目のオペラ(チャイコフスキー自身は「抒情的場面」と呼んでいます)です。

 

文豪プーシキン原作の物語は、田舎娘タチヤーナの純愛を冷たく退け、友人を決闘で殺してしまった貴族の青年オネーギンが、数年の放浪後に美しいグレーミン公爵夫人となったタチヤーナと巡り会い、改めて彼女に恋心を抱くものの、今度は彼が拒絶されるといった内容です。

 

「ポロネーズ」は、第3幕冒頭のグレーミン公爵家の舞踏会で演奏されるオーケストラ曲。ここは通常、放浪から貴族社会に戻ったオネーギンが舞踏会にやってくる場面にもなります。曲は、幕開けを告げるファンファーレで開始。続いてポロネーズ(ポーランドの緩やかな3拍子の民族舞曲)の様式による堂々とした音楽が展開され、貴族の華麗な世界が表現されます。

 

 

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

チャイコフスキーが完成した最初の協奏曲。創作活動の中では比較的早い時期にあたる1874~75年に書かれた作品ながら、彼が残した3曲のピアノ協奏曲のみならず、古今の全ピアノ協奏曲中、最上位の人気作となっています。

 

この曲は、初演に至るまでのエピソードで知られています。当時モスクワ音楽院の教師だったチャイコフスキーは、完成した本作を、音楽院の院長を務める大ピアニスト、ニコライ・ルビンシテインの前で披露しました。そこで彼に献呈するべく助言を仰いだところ、ルビンシテインから「無価値で演奏不能」と酷評されてしまいます。怒ったチャイコフスキーは、変更すべき点を指摘するこの大家に向かって「一音たりとも変更するつもりはない!」と応酬した挙げ句、自分の支持者だったドイツの巨匠ハンス・フォン・ビューローに楽譜を送付。初演は1875年10月、ビューローの演奏旅行先であるアメリカのボストンで行われました。

 

とかく悪者扱いされているルビンシテインですが、実際は何かとチャイコフスキーの面倒をみてきた大恩人。しかも同年行われた本作のモスクワ初演では自ら指揮し、その後ソロもたびたび弾いています。またチャイコフスキーの方も、「一音」どころか、1879年と1889年の2度に亘って改訂を施しており、現在耳にするのは1889年の改訂版です。それゆえ前記のエピソードは意地の張り合いといった感じがしなくもありません。

 

曲は、古典的な協奏曲形式をとりながらも、民族的な色彩感と抒情性、比類ない迫力とスケールの大きさを合わせもった力作。ピアノ・ソロのヴィルトゥオーゾ性も高く、ピアニストの腕前発揮に相応しい場面が多数盛り込まれています。

 

第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ・エ・モルト・マエストーソ ~ アレグロ・コン・スピーリト。演奏時間が全曲の半分以上を占める壮大な楽章。ホルンの出だしで有名な変ニ長調の長い序奏部で始まります。ただし序奏部の主題は主部に入ると全く登場しません。これはかなり珍しいパターンです。変ロ短調の主部は、ロシア民謡から採られたといわれるリズミカルな第1主題と、哀感を帯びた第2主題を中心に多彩な展開を遂げます。数回に及ぶピアノのカデンツァも大きな聴きどころです。

 

第2楽章 アンダンティーノ・センプリーチェ。変ニ長調。フルートで出される主題を軸にした牧歌風の緩やかな部分に、スケルツォ風の中間部(プレスティッシモ)が挟まれた、変化著しい楽章。急速部分のめまぐるしいピアノも耳を奪います。

 

第3楽章 アレグロ・コン・フオーコ。第1主題と、流麗な第2主題が対比されながら激しく進み、畳み込むように終結します。

 

 

チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64

チャイコフスキーの三大交響曲(他の2曲は第4番と第6番「悲愴」)のひとつ。ロシアの全交響曲の中でも屈指の人気を誇っています。

 

交響曲第4番の完成から10年、指揮活動等で外国に滞在することが多く、創作活動は若干停滞気味だったチャイコフスキーですが、旅行中にブラームス、グリーグ、ドヴォルザーク、マーラー等と知り合い、近代的なオーケストラ演奏にも触れて、少なからず刺激を受けていました。そして1888年、「まるで絵画のような」(自身の手紙より)環境のフロロフスコエ村に居を構えたのを機に創作意欲が沸き上がり、僅か3ヶ月ほどで本作を完成。1888年11月ペテルブルグで、チャイコフスキー自身の指揮により初演されました。ただこのときは、聴衆こそ大喝采したものの、批評家の評価が芳しくありませんでした。しかも作曲者自身「あの中には何か嫌なものがあります。大げさに飾った色彩があります」とパトロンのフォン・メック夫人への手紙に記しています。しかし翌1889年ドイツのハンブルクで成功を収めて以来、西欧を中心に人気を獲得。バレエ「眠りの森の美女」、歌劇「スペードの女王」、バレエ「くるみ割り人形」等を経て「悲愴」交響曲に至る、生涯最後の傑作群の幕開けを告げることとなりました。

 

自作の内容を手紙等で詳細に説明することが多かったチャイコフスキーも、本作に関しては多くを語っていません。それでも、第1楽章冒頭の旋律を「運命、もしくは神の摂理への完全な服従」と表現したことから、一般的には「運命」が全体のテーマだと解釈されており、冒頭の旋律は「運命主題」と呼ばれています。さらには、運命主題が「固定楽想」として各楽章のどこかに必ず登場する「循環形式」をとっている点、第3楽章に通常のスケルツォではなくワルツを用いている点も特徴をなしており、暗い運命主題が終楽章では長調に姿を変え、勝利の凱歌で終結する点も印象的です。全体をみれば、シリアスさ、甘美さ、情熱、歌、迫力等々、チャイコフスキーの魅力が満載された名曲といえるでしょう。

 

第1楽章 アンダンテ ~ アレグロ・コン・アニマ、ホ短調。最初にクラリネットが弱音で奏でるのが「運命主題」。主部は、クラリネットとファゴットが出す歩むような第1主題と、弦楽器と木管楽器が出すのびやかな第2主題を中心に、ダイナミックな展開を遂げ、クライマックスが築かれた後、弱音で終結します。

 

第2楽章 アンダンテ・カンタービレ、コン・アルクーナ・リチェンツァ(コン~以下は「多少の自由さをもつ」の意味)、ニ長調。甘美で陶酔的な緩徐楽章。弦楽器による導入後、ホルンのソロで出されるメイン主題はきわめて美しく、ここは大きな聴きどころとなります。その後は、オーボエが出す副主題をまじえながら広がりを増していき、クラリネットのソロに始まるやや速め(モデラート・コン・アニマ)の中間部が挟まれます。しかし盛り上がりの頂点を運命主題がさえぎります。

 

第3楽章 ワルツ:アレグロ・モデラート、イ長調。チャイコフスキーの十八番である艶美なワルツ。流麗な主題による主部に、ヴァイオリンが出す小刻みな動きを中心とした中間部が挟まれ、最後に登場する運命主題が、夢気分を現実に引き戻します。

 

第4楽章 フィナーレ:アンダンテ・マエストーソ ~ アレグロ・ヴィヴァーチェ。ホ長調の運命主題で始まる荘重な序奏から、快速調で力強いホ短調の主部へ移り、荒々しく刻まれる第1主題と、木管で出される第2主題を中心にダイナミックに進行。壮大なクライマックスが形成され、全休止の後、凱旋行進曲のような終結を迎えます。

 

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