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2019/02/1

名曲のちから オーケストラ・スタンダードVol.22 プログラムノート

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柴田 克彦

 

 

シベリウス:交響詩「フィンランディア」 作品26

本日は、フィンランドの国民的な大作曲家ジャン・シベリウス(1865−1957)の代表作が披露されます。それぞれ、管弦楽曲、協奏作品、交響曲のジャンルにおける北欧の看板曲となった名作です。

 

「フィンランディア」は、シベリウスの代名詞ともいえる有名曲。フィンランドは1809年以降ロシアの支配下にあり、1899年に入ると、時のロシア皇帝ニコライ2世が議会の廃止や言論の圧迫によって属領化を推進しました。そこで同国では愛国運動が盛り上がり、1899年11月、その一環として新聞関係者による年金基金のための行事が開催されました。当行事では歴史劇「歴史的情景」の上演も企画され、付随音楽をシベリウスが担当。彼は序曲と6つの場面の音楽を作曲しました。この「歴史的情景」の最終場面にあたる「フィンランドの目覚め」の音楽を改訂したのが、交響詩「フィンランディア」です。

 

本作は、1900年のパリ万国博覧会に参加するヘルシンキ・フィルの演目として企図され、1900年7月、ヘルシンキにおけるパリ万博参加記念コンサートで初演されました。しかしロシアとの関係から愛国的なタイトルを使用できず、初演時は「スオミ(自国語で『フィンランド』の意味)」、パリ万博を含む演奏旅行中は「祖国」に変更せざるを得ませんでした。そして本作は、国民の士気を大いに鼓舞し、熱い支持を獲得。独立運動の象徴的存在となりました。フィンランドは第一次大戦後の1917年に独立国となりましたが、本作の人気は衰えず、1938年には詩人ヴェイッコ・コスケンニエミが中間部の旋律に歌詞を付けて、「フィンランディア賛歌」と題した合唱曲に改編。これも支持を集め、第二の国歌的な音楽となりました。

 

曲は、金管楽器を効果的に用いた迫力あるサウンドと迫真の展開が特徴です。苦難を思わせる重い序奏に続いて、闘いを呼びかけるような力強いフレーズが登場。苦しみに立ち向かうかのように進み、勝利を呼び覚ます躍動的な旋律も加わります。中間部では、「フィンランディア賛歌」となった旋律がじっくりと奏され、再び激しさが戻って前半の音楽が再現された後、中間部の旋律をまじえながら、高らかなクライマックスが築かれます。

 

 

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47

シベリウスが残した唯一の協奏曲。20世紀の同ジャンルの最高傑作とも称される1曲です。シベリウス唯一の協奏曲がヴァイオリンのための作品であるのは、彼が当初ヴァイオリニストを志ざし、高度な技術を会得していたことが大きく働いています。実際彼は、メンデルスゾーンの協奏曲等を演奏し、ウィーン留学中にはウィーン・フィルのオーディションも受けています(ただし不合格)が、極度のあがり症ゆえに演奏家への道を断念しました。

 

本作は1903年に作曲され、翌1904年2月ヘルシンキにて、ヴィクトル・ノヴァチェクのソロと作曲者の指揮で初演されました。しかし、献呈を予定していた名ヴァイオリニスト、ブルメスターの都合がつかなかったこと、曲の仕上げ不足や技術的に難しすぎたことなどが相まって失敗に終わります。そこでシベリウスは1905年に大幅な改訂を施しました。改訂稿は、同年10月ベルリンにて、カレル・ハリールのソロ、リヒャルト・シュトラウス指揮/ベルリン・フィルによって初演されましたが、賛否は二分。その後長い時間をかけて名作の座を獲得しました。

 

シベリウスの音楽は、田舎の村ヤルヴェンパーへ引っ越した1904年を境に、国民楽派的な作風から透明感漂う簡潔な作風へと変化しますが、移住の前後に亘って書かれた本作は、両方の要素をバランス良く併せ持った作品となっています。曲の最大の特徴は、華麗な名人芸的なソロを管弦楽が伴奏する形ではなく、交響曲風の音作りの中でソロが弾かれていく点。とはいえソロは高度な技巧を要し、見せ場も少なくありません。また、通常は終盤に位置する第1楽章のカデンツァ(ソリストが単独で弾く技巧的な見せ場)が中間部に置かれ、それ自体が展開部を成している点、第1楽章がニ短調で開始されながら、第2楽章は変ロ長調、第3楽章はニ長調を基調としている点なども特徴的。そして全編に漂うフィンランドの森や湖を彷彿させる響きが、シベリウスならではの世界を醸し出します。

 

第1楽章:アレグロ・モデラート
様々な楽器が活躍する変化に富んだ音楽。曲全体の約半分を占める長大な楽章です。ヴァイオリン・パートの弱音に乗ってソロが哀愁を帯びた第1主題をじっくりと奏した後、チェロとファゴットで始まる第2主題、テンポを速めてオーケストラが奏する第3主題が続き、中間部のカデンツァを経て、激しく盛り上がります。

 

第2楽章:アダージョ・ディ・モルト
全体に静かで抒情的な緩徐楽章。木管楽器が神秘的に歌う旋律と、ソロが奏でる瞑想的な旋律を中心に運ばれ、中間には力強い場面も現われます。

 

第3楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ
民族舞曲風の2つの主題を中心にした、活気溢れるフィナーレ。ソロが縦横に駆け巡り、最後は圧倒的な高揚を遂げます。

 

 

シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 作品43

シベリウスは、20世紀音楽への転換期にあって、もっとも交響曲に力を注いだ作曲家の一人です。1899年から1924年までの間に7曲の交響曲を完成し、すべての曲が傑作と称されています。ただ前述のように、彼は田舎の村ヤルヴェンパーへ引っ越した1904年を境に、ロマン派&国民楽派的な作風から透明感漂う簡潔な作風へと変化しました。したがって、とりわけ親しみやすいのは作風が変化する以前の2作、国民楽派的な第1番とロマン派的な第2番です。中でも人気が高いこの第2番は、北欧を代表する交響曲として頻繁に演奏されています。

 

1900年のパリ万博で前年作の交響曲第1番等を指揮して成功を収め、名声を高めたシベリウスは、1901年に家族と共にイタリアへ旅行しました。本作は、この際に地中海沿岸の景勝地ラパッロで着想した音楽を取り入れながら、同年夏から年末にかけて作曲され、翌1902年初頭に完成。1902年3月、ヘルシンキにて作曲者の指揮で初演され、大成功を収めました。

 

本作は、イタリアでインスピレーションを得たドン・ファン伝説やキリストに因む楽想が、第2楽章に反映されているともいわれています。しかしながら作品全体を支配するのは、北欧の自然を連想させる色彩感や空気感であり、その点が孤高の作風に移行する以前のロマン派的なスタイルと絶妙に融合し、万人を魅了する作品に仕上がっています。

 

曲は、4楽章構成の伝統的な交響曲の形をとりながらも、交響詩や幻想曲的な要素が強い音楽です。第3楽章の最後をクレッシェンド(徐々に強く)させて第4楽章になだれ込む形も特徴的。これはベートーヴェンの「運命」交響曲を思い起させます。そして第4楽章の息の長い盛り上がりが、聴く者の気分をいやがおうにも高揚させます。

 

第1楽章:アレグレット
幻想曲風の音楽。開始後まもなくクラリネットとオーボエが奏する民謡風の第1主題と、やはり木管楽器が呈示する、音を長く伸ばして最後だけ細かく動く第2主題を中心に進み、次第に情熱を増していきます。

 

第2楽章:テンポ・アンダンテ、マ・ルバート
交響詩を思わせる緩徐楽章。開始から続く低音弦楽器のピッツィカートに乗ってファゴットが奏でる寂しい第1主題、弦楽器が奏でる優美な第2主題を軸に進み、途中で大きなクライマックスが築かれます。

 

第3楽章:ヴィヴァチッシモ
いわゆるスケルツォの楽章。荒々しさが支配した主部に、オーボエが美しい旋律をしみじみと歌うトリオ(中間部)が対比されます。2度目のトリオの盛り上がりの頂点で終楽章へ移行。

 

第4楽章:アレグロ・モデラート
冒頭の力強く幅広い第1主題の部分と、悲しげな第2主題の部分が対照されながら進行。果てしない高揚を遂げていき、賛歌のような終結に至ります。

 

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