『楽団員が見る風景』第22回
~神谷未穂に聞く第394回定期演奏会~
次回10月の定期演奏会には、プロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」とストラヴィンスキーの「火の鳥」という20世紀を代表するロシアの作曲家の代表作が並びます。しかも、「火の鳥」はめったに演奏されることのない1910年全曲版。仙台フィルにとっても初挑戦です。難解であやしげでトリッキーな2曲に、さてどう向き合うか、副指揮者3カ月目の東尾多聞と入団16年目のコンサートマスター神谷未穂が語り合います。
※第393回定期演奏会のプログラム冊子に掲載している『楽団員が見る風景』と同じ内容です。
東尾 「火の鳥」1910年版は、めったに演奏されることがないですよね。仙台フィルにとっても初めてとか。
神谷 私の音楽人生も長くなってきたけど、演奏するのは初めて。団員もほぼ初めてでしょう。
東尾 全曲通すと50分ほどかかるし、4管編成。しかも、オーケストラとは別働隊のアンサンブル、バンダも必要です。そもそも変拍子が続いて難しいのに、全曲版にはストーリーもある。コンマスとしてはストラヴィンスキーにどう向き合っていらっしゃいますか?
神谷 私、ストラヴィンスキーが大好きなの!難曲だけれど、弾けてうれしい、という気持ちの方が強いです。そもそもバレエ音楽に出会ったきっかけは、幼いころに見た「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」のバレエ。パリ・オペラ座のバレエ学校の子どもたちが毎年東京に公演にやってきて、すごく楽しみだったんですよ。親に「連れてって〜」と頼み込んで。
東尾 最初にバレエの舞台に親しまれたんですね。僕にとっては、「火の鳥」はロマンティックでロシア情緒豊かで、「ペトルーシュカ」「春の祭典」とはちょっと違うと感じるんですが…。
神谷 私の中ではあまり違いは感じないかな。「火の鳥」を初めて弾いたのは大晦日の夜の演奏会で、ほんとに大変で「年越せない」といいながら、舞台のそででぎりぎりまで練習していたんですよ(笑)。プロになってからはだんだん難しさが薄れて、見えてきた風景がありますね。
東尾 僕はまだ譜面を追うので精一杯だなぁ。指揮者はパワーが求められるし、能力も問われる。もし振り間違ったりしたら、オケは崩れてしまう。1959年にストラヴィンスキーが来日してNHK交響楽団を振ったとき、首を傾げながら振っていたという話を聞いたことがあります。作曲者なのに(笑)。
神谷 ハハハ。確かに音楽が体に入っているとはいえ、指揮者次第のところはありますね。高関さんの指揮のもとでは、不安な曲もいつもクリアに演奏できます。マジックみたいに。不思議なもので、指揮者の肩が上がってくると奏者の肩も上がってくる。脱力しなければいい音は出せないです。
東尾 指揮科の授業でもよくいわれましたよ、「脱力」と。楽器演奏はみんなそうですよね。不思議ですね、指揮者で音が変わる。昨年、山田和樹さんの指揮でストラヴィンスキーの3大バレエを演奏されたときはどうでしたか?
神谷 あのときの「火の鳥」は1919年版。3大バレエは、ヴェロさんの時代にやっているんです。おふたりに共通しているのは、踊るように指揮なさって、本番で演奏者に躍動感を託すところ。高関さんは構築的に音楽をつくられるイメージですが、最近はその場で起きることを楽しんでいらっしゃる気がしますね。
東尾 高関先生は楽譜の読み込みがすごい。僕は仙台フィルは、本番になると特別のパワーを発揮するオーケストラだと感じているんです。全曲版をどう指揮されるか、本番が楽しみです。そして、プロコフィエフのピアノ協奏曲3番。ソリストの奥井紫麻さんは、僕の2歳年下の22歳です。プロコフィエフもまた難曲で、技術がないと音楽的な表現はできないですね。
神谷 プロコフィエフはひねりがあって、あやしげでグロテスク。ストラヴィンスキーにもいえますが、打楽器の使い方がすばらしい。ピアノ協奏曲は風景が見えてくる感じがします。第1楽章の最初のところは、鉄道とか馬がばーっと走っているようなイメージ。指揮者の方がイメージを話してくださると、器楽奏者としては緊張感がなくなってすごく弾きやすくなるんですよ。
東尾 そうか、イメージを伝えると変わるものなんですね。僕はプロコフィエフというと、巨大な建築物の中に入り込むようなイメージが浮かぶんです。教会の装飾を見ているような気分になります。
神谷 奥井さんとの協演は初めて。幼少期からロシアで勉強されていらっしゃる方なので期待しています。
東尾 それにしても副指揮者になってからの定期は、チャレンジングな曲ばかりで、もう譜読みから大変。団員のみなさんの温かさに助けられてます。
神谷 私も朝4時起きの練習が何日も(笑)。若い団員も猛練習してますよ。
取材:東尾 多聞(仙台フィル副指揮者)
編集・構成:西大立目 祥子
東尾 全曲通すと50分ほどかかるし、4管編成。しかも、オーケストラとは別働隊のアンサンブル、バンダも必要です。そもそも変拍子が続いて難しいのに、全曲版にはストーリーもある。コンマスとしてはストラヴィンスキーにどう向き合っていらっしゃいますか?
神谷 私、ストラヴィンスキーが大好きなの!難曲だけれど、弾けてうれしい、という気持ちの方が強いです。そもそもバレエ音楽に出会ったきっかけは、幼いころに見た「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」のバレエ。パリ・オペラ座のバレエ学校の子どもたちが毎年東京に公演にやってきて、すごく楽しみだったんですよ。親に「連れてって〜」と頼み込んで。
東尾 最初にバレエの舞台に親しまれたんですね。僕にとっては、「火の鳥」はロマンティックでロシア情緒豊かで、「ペトルーシュカ」「春の祭典」とはちょっと違うと感じるんですが…。
神谷 私の中ではあまり違いは感じないかな。「火の鳥」を初めて弾いたのは大晦日の夜の演奏会で、ほんとに大変で「年越せない」といいながら、舞台のそででぎりぎりまで練習していたんですよ(笑)。プロになってからはだんだん難しさが薄れて、見えてきた風景がありますね。
東尾 僕はまだ譜面を追うので精一杯だなぁ。指揮者はパワーが求められるし、能力も問われる。もし振り間違ったりしたら、オケは崩れてしまう。1959年にストラヴィンスキーが来日してNHK交響楽団を振ったとき、首を傾げながら振っていたという話を聞いたことがあります。作曲者なのに(笑)。
神谷 ハハハ。確かに音楽が体に入っているとはいえ、指揮者次第のところはありますね。高関さんの指揮のもとでは、不安な曲もいつもクリアに演奏できます。マジックみたいに。不思議なもので、指揮者の肩が上がってくると奏者の肩も上がってくる。脱力しなければいい音は出せないです。
東尾 指揮科の授業でもよくいわれましたよ、「脱力」と。楽器演奏はみんなそうですよね。不思議ですね、指揮者で音が変わる。昨年、山田和樹さんの指揮でストラヴィンスキーの3大バレエを演奏されたときはどうでしたか?
神谷 あのときの「火の鳥」は1919年版。3大バレエは、ヴェロさんの時代にやっているんです。おふたりに共通しているのは、踊るように指揮なさって、本番で演奏者に躍動感を託すところ。高関さんは構築的に音楽をつくられるイメージですが、最近はその場で起きることを楽しんでいらっしゃる気がしますね。
東尾 高関先生は楽譜の読み込みがすごい。僕は仙台フィルは、本番になると特別のパワーを発揮するオーケストラだと感じているんです。全曲版をどう指揮されるか、本番が楽しみです。そして、プロコフィエフのピアノ協奏曲3番。ソリストの奥井紫麻さんは、僕の2歳年下の22歳です。プロコフィエフもまた難曲で、技術がないと音楽的な表現はできないですね。
神谷 プロコフィエフはひねりがあって、あやしげでグロテスク。ストラヴィンスキーにもいえますが、打楽器の使い方がすばらしい。ピアノ協奏曲は風景が見えてくる感じがします。第1楽章の最初のところは、鉄道とか馬がばーっと走っているようなイメージ。指揮者の方がイメージを話してくださると、器楽奏者としては緊張感がなくなってすごく弾きやすくなるんですよ。
東尾 そうか、イメージを伝えると変わるものなんですね。僕はプロコフィエフというと、巨大な建築物の中に入り込むようなイメージが浮かぶんです。教会の装飾を見ているような気分になります。
神谷 奥井さんとの協演は初めて。幼少期からロシアで勉強されていらっしゃる方なので期待しています。
東尾 それにしても副指揮者になってからの定期は、チャレンジングな曲ばかりで、もう譜読みから大変。団員のみなさんの温かさに助けられてます。
神谷 私も朝4時起きの練習が何日も(笑)。若い団員も猛練習してますよ。
取材:東尾 多聞(仙台フィル副指揮者)
編集・構成:西大立目 祥子


