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楽団員リレーコラム

リレーコラム<第5回>

無題:コントラバス 村上満志さん

仙台フィルホームページに何か書けとの仰せ。しかしながら、別段人様に申し上ぐべき趣味も特技も持ち合わせない小生には、何を書けば良いのやら…。

気がつけば、人間を始めて不覚にも半世紀の時間(とき)をすでに浪費してしまい、であるにもかかわらず、今や食べる事のみが生き甲斐といった為体。ならばと、開き直って、自ら思うところの「うまいもの」の話でもさせて頂くことにする。

小生、根からの極東人(などという言葉があるのだろうか)にして、西欧の食と女性には食指が動かず…。おっと、この御時勢に食と女性を同列に論ずるとは、言語道断、何事ぞ…。という訳で、いわゆる洋食なるものには、あまり食欲が湧かない方で、フランス料理風と言われて出された帆立貝に、ついついお醤油をかけたくなる類のオッサンである。

よって、非常に一般的かつ、変わりばえがなく恐縮だが、寿司とその周辺について、少し書かせて頂く。といっても左様に食べ歩いた訳ではないので、自分の行動範囲の中で細々とお話しさせて頂く。

住居のある千葉、コントラバスを弾かせて頂いている仙台、大学へ行っている名古屋、学生時代を過ごした松江、出身地広島…まてよ、食文化の谷間、名古屋ははずそう。第一そんなに沢山書いたら、読む人があきてしまう

小生、寿司を食べ始めたのは、今の住まいの前に住んでいた千葉県は船橋市で、30歳過ぎからのように記憶している。その頃、演奏会の後、自宅100m手前の寿司屋に寄る事が習慣のようになってしまった。その店で寿司をつまみ乍ら、ビールを1本飲む事でほとんど出来上がり、店を出て自宅迄の100mを誰にともなく「バッキャロー」と悪態をつきながら歩くことで、ストレス解消にこれ努めていた。

そこの寿司屋、下町の何の変哲もない店だが、町が漁師町だった為、それなりのネタが置いてあり、なかなかよろしかった。特に、通称馬鹿貝と言われる青柳は地元産で、身が大きく、さっとお湯を通していて形が整い、ほんの少し甘さがでて、しかも生臭さが消えて、なかなかのすぐれ物だ。

その店の玉にキズは、オヤジさんのキャパ(キャパシティ)が小さめで、少し客が立て込んだり、また食べている時にちょっと多目の出前注文が入ったりすると、すぐにパニクッてしまい、不機嫌になる。おかげで客である小生が、オヤジの様子を見ながら食べなくてはいけない事となる。その町を引越した今も、その店には時々顔を出している。付き合いが永い分だけ、落ち着けるのである。

次に、広島の寿司屋、というよりは料理屋。

かつて広島交響楽団のお手伝いをさせて頂くことが多かった頃、そこで生まれ育ったこともあり、昼食はまず広島風お好み焼きで体調を整え、夜はいざ、料理屋へ。瀬戸内の白身魚や、小鰯の刺身も良いが、「夜鳴き貝」なる巻貝がよろしい。そして何より、下足(げそ)のなま寿司である。軟骨の少し付いたなま下足を大葉にはさんで握ってもらうと、これ最高。忘れてました。ワサビは多めに。小生にとって、この店のとっておきは、秋に頂ける土瓶蒸。もはや罪悪感さえ感じてしまう美味しさである。これを口に運ぶたびに、子育ての為だけに一生を終わったような父親を、なぜだか思い出してしまう。

その昔、学生時代を過ごした街、“松江”は、築城以来そのままの松江城が、街全体を抱え込みように鎮座している。

そこでは、春には野に舞う蝶とたわむれ、夏には牛蛙の合唱に心なごませ、また、秋は夕映えの宍道湖に物思い、そして冬には深々と降り積もる純白の雪に、鬱々とした青春を感じつつ、そのようにして無垢なる4年間を過ごした。

寿司とは関係のない話になってきたが、勿論学生時代には寿司など食べる余裕はなく、松江で食べるようになったのは、卒業して再び松江を訪ねてからでである。日本海側の松江ではイカが美味しく、松江を訪ねる度に寄るお寿司屋ではその他に焼き物が良い。小生、酒はあまりイケない方、というよりからきしだめな方だが、肴は好きである。まるごとの焼き魚はもちろん、脂の乗った砂ずり(魚のお腹部分)をカリッと焼いてもらうと、これが良い。しかし、何にもまして、松江では学生時代の友人と、昔話をしながら飲めるのが、美味しさを引き立ててくれるかもしれない。

さて、最近仙台でお世話になっている店が、向山の住まいの近くにある。このオヤジさん、なかなかの芸術家にして、アイディアマン。ツマミのお刺身は、竹を半割りにした器に、大根は勿論、アク抜きした薄切りジャガイモ(白)・人参(赤)サラダ、かぼちゃ(黄)などで色どりを整え、見て美味しい盛り合わせを出してくれる。鮨はといえば、それぞれのネタに漬物や揚げヤサイ、生ヤサイを合わせて握る。例えば、中トロ(素材もよく)に漬け込んだニンニクの茎、つぶ貝にカリッと揚げた蓮根をのせて、海苔で合わせる。アジには、お決まりのネギに加えてほそ切りの山芋、カニのむき身にキャベツの芯の細切りをのせるといった具合…。すべてがナイスな味の取り合わせである。

どうも愚にもつかない事を、だらだらと書きつらねてしまいましたが、どうやら小生のような者にでも美味しい物を食べさせてあげようとする店の主人の心意気が、全ての美味なる物の源泉のように思える。

仙台フィルを聴いて下さるお客様に、少しでも良い音楽を提供できるよう、また、お客様の期待を裏切らないよう、小生も老骨に鞭打って練習に励む事としよう。

いつまでも仙台フィルを贔屓にして頂くことをお願いして、稚い雑文を終らせて頂きます。

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