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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.12 ティンパニストが語るティンパニInterview

竹内将也,佐々木祥

竹内将也          佐々木祥

インパクトのある低音でオーケストラの骨格をつくる。

ティンパニはトルコからやってきた

─いつも何台のティンパニを演奏しているんですか?
竹内/基本は2台一対で使うものなんです。ティンパニはイタリア語の複数形で、単数形だとティンパノ。古典派までは2台、「ド」と「ソ」の音が基本です。径が大きいほど低い音が出ます。
佐々木/2台というのは、ティンパニってもともとはトルコの軍楽隊の楽器で、馬の背に乗って左右に一つずつ下げて叩いてたから。シンバルもトライアングルも大太鼓も、トルコからヨーロッパに入ってきたものなんだよね。
竹内/ヨーロッパの人たちは絶えずエキゾチックなものを求める傾向がありました。まず、トランペットやティンパニが宮廷のオーケストラで使われるようになったんですね。
佐々木/2台のティンパニの並べ方もあって、アメリカ式だと右側に高い音を置くんだけど、ドイツ式は逆で右に低い音がくる。ほんとかどうかわからないけど、昔は動物の背に乗って叩いてたから、背中に乗り込みやすいように左側に小さな方を下げたのがドイツ式の起源という説があります。自転車と一緒です。(笑)
竹内/僕は、右に小さい方を置いてます。どちらの並べ方かは奏者によってさまざまで、オーディションのときは確認するんですよ。
佐々木/色んなオーケストラを観るときに注意すると面白いですよ。よく見ると、並べ方が違っていて。

 

この100年で進んだ技術開発

─時代を追うごとに楽器が進化しているんですね。
竹内/日本最古といえるティンパニから、1960年代に発明されたペダル式のティンパニまで4台並べたので見てください(右下写真参照)。手前の一番古いのは、1904年に東京音楽学校(東京藝術大学の前身)に、日本で最初にオーケストラを編成した外国人教師のユンケル博士が寄贈したもの。恩師の有賀誠門先生からお借りして仙台フィルで使用しているんです。100年以上前のものだけど現役。現代の楽器より小ぶりで、バッハとかモーツァルトの管弦楽曲にぴったりなんです。
牛皮を6~8つある手締めのネジで固定して音程を調整してます。19世紀まではティンパニの曲中の音程はほとんど固定されていた。例えば、ドヴォルザークの新世界の3楽章でフルートが印象的なメロディーを吹くけど、ティンパニは同じことを一つの音だけ、つまりリズムだけで表現している。かえってそれが効果的なんだけどね。いくつものネジを調節して音程を変えるには時間がかかる。でもだんだんと作曲家が演奏中にひんぱんに音程変えを求めるようになってきて、自在でスピーディーに音程を変えられるペダル式が開発されていったんです。
佐々木/それを支える工業技術が発達したから、可能になったんだよね。

 

ティンパニの役割が変わっていく

─ティンパニストにとって大切な作曲家とは?
竹内/「3大B」ってあるんです。ベートーヴェン。ベルリオーズ。そして、バルトークです。ベートーヴェンは、第8番の交響曲で、それまで「ド」と「ソ」が基本だったティンパニに、跳躍するような「ド」とその上の高い「ド」=1オクターヴの音程を指定した。曲想に緊張感を創り上げたんです。
佐々木/当時としてはあり得ない発想。革命的です。同時に2つの音を叩くのを初めてやったのもベートーヴェンじゃない?
竹内/第九の3楽章でね。それをもっとやったのがベルリオーズ。「レクイエム」ではなんと16台のティンパニを10人の奏者が同時に演奏し和音をつくります。
佐々木/「幻想交響曲」の4楽章でも、打楽器奏者が4人ティンパニのまわりに集まっていって「ドロドロドロ」と遠くの雷鳴を表しているところがありますね。
竹内/そして、打楽器を先進的、より音楽的に扱う作品を数多く作ったのがバルトーク。
佐々木/自在に音程を変えられるペダルティンパニが出てきたからこういう曲が可能になったんですね。
竹内/20世紀はティンパニの音程が自由自在になることと、ドレミ~の音楽が複雑化して行き詰まっていくことが同時期に起こります。ティンパニがいろんな音でキメまくると曲の構造が分かりにくくなってしまうのです。調性音楽の終焉です。
佐々木/いまは大きいのから小さいのまで少しずつ音域のかぶる数台を並べて、ペダルで瞬時にして音を出しているわけだけど…
竹内/その中のどの楽器で音を出すかは、曲によっても場所によっても違う。一台一台鳴りどころもあるから総合的に判断してます。そして、ペダルで半音上げたり下げたり、弦楽器奏者が指でやっていることを足でやっているわけですね。


ティンパニ

ステージに並んだ4台のティンパニ(オランダ・アダムス社製)。どの楽器で音を出すかは、奏者の判断にゆだねられる。

ティンパニ02

一番手前が「1904」と記されているティンパニ。指揮者の故・岩城宏之も演奏したという。次々と技術開発がなされ、一番奥がペダル式。

 

たけうち まさや 仙台フィル ティンパニ首席奏者。カイロ音楽院教授を経て2002年入団。

ささき やすし 仙台フィル 打楽器奏者。1985年入団。

第322回定期演奏会(2018年10月19日,20日)プログラムより

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