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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.11 テュービストが語るテューバInterview

ピーター・リンク

ピーター・リンク

金管楽器の低音部を受け持ち、管楽器と弦楽器の架け橋となる。

2.7メートルに及ぶ長い管は広い音域を誇る

─外からはわかりにくいですが、2つに折れ曲がっているそうですね。
ピーター/いや、体の大きい小さいはあまり関係がないですね。日本のオーケストラは女の人のテューバ奏者、多いですよ。外国を見ても、たとえばフィラデルフィア管弦楽団の奏者も女性です。
実は、テューバに必要な息の量はフルートと同じくらい。フルートの唄口の穴の大きさは、テューバのマウスピースの一番細い部分のサイズとそう変わらないんです。肺活量がいっぱいある人は楽だけれど、小柄な女性のように少ない人は息を効率的に使えばいい。一つのフレーズの中でブレスの場所を確保しながら吹けば問題はありません。

 

大きな楽器をコントロールするためのブレス、そのためのテクニック

─全長は9メートルを越えるとか。音の出るしくみを教えてください。
ピーター/金管楽器の中では1番低い音が出て、オーケストラ全体でいうとコントラバスやコントラファゴットと近い音程です。
テューバは4つの管がつながっていて、伸ばすと10メートル近くになります。4つのバルブがあって、押し方で管の息の通り方が変わり、4つのバルブ全部を押すと全部の管に息が入って低い音が出ることになります。息が通る管が長くなっていくと、抵抗も強くなっていくから、息づかいがとても重要になってくるけど、これは経験だね(笑)。
─この大きな楽器を息でコントロールするのは難しそうですね。
ピーター/大きい分、音の振動は長いし、息を吹き込んでから音になるまでの時間もかかります。頭と神経と筋肉をうまくつながないとね。マウスピースだけのトレーニング、スケール、アーティキュレーション、ロングトーンなどの基礎的な練習は欠かせませんね。
自分が出して聴いている音とお客さまが聴いている音も違う。自分ではちゃんと出していると感じていても、客席ではクリアに聴こえていないことがあるんです。これは生徒にもよく言っていること。本番の録音音源を自分で聴いてみるのもよくやりますよ。あとは、頑張るしかない(笑)。

 

恩師ポコーニと同じモデルを吹く

─ピーターさんが吹いているのはどんなテューバですか?
ピーター/僕が吹いているのは、実は特別な楽器なの。もう今はないんだけれど、アメリカにヨーク社というテューバの名器を生み出した有名なメーカーがあったんです。ヴァイオリンでいうところのストラディバリウスだね。でも、ヨーク社製の現存するテューバはシカゴ交響楽団が持っているものだけといわれていて、シカゴ交響楽団に1944年から40年以上も在籍した名テューバ奏者のアーノルド・ジェイコブズがその楽器を使い、そのあとを引き継いで首席奏者になったのが僕の先生のジーン・ポコーニ。僕が使っているのは、この楽器の図面をもとにヤマハが復元したヨークモデルなんです。つまり先生が使っていた楽器のコピーを、特別に提供を受けて使っているというわけ。ヨークモデルは、いろんなメーカーがコピーを製作しているんですよ。もちろん、形も響きもアメリカのスタイルです。

 

ロマン派後期、近現代の曲で大活躍

─テューバの活躍する曲はありますか?
ピーター/大活躍するシンフォニーといったらプロコフィエフの5番だね。テューバ吹きなら誰もが吹きたい曲です。プロコフィエフは、テューバに何ができるかをよくわかっていた作曲家だと思います。
ワーグナー、マーラー、ブルックナー、ショスタコーヴィチも活躍する曲をつくっていますね。
─オーケストラの中では、どんな役割を果たしていると思いますか?
ピーター/座っているのがコントラバスとトロンボーンの間。演奏はコントラバスやチェロといっしょに動くことが 多いんです。だから、弦楽器と金管楽器のブリッジになること、そこをうまくつないでいくことが役割だと考えているんです。


テューバ

ヨーク社のモデルを復元した楽器を愛用している。恩師G.ポコーニと同じモデルを吹くのはよろこびだ。重さは約10キロ。重いだけに、テューバは落下などによる事故も多く、持ち運びには細心の注意を払う。

Peter LINK 仙台フィル首席テューバ奏者。アメリカ陸軍音楽隊を経て、デポール大学音楽学部を卒業。シカゴシビックオーケストラに在籍後、シカゴを拠点にフリーで活躍。2008年入団。

第321回定期演奏会(2018年9月14日,15日)プログラムより

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