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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.14 チェリストが語るチェロInterview

三宅進,吉岡知広

三宅 進       吉岡 知広

ベースラインとして音楽に骨格をつくり、流れを育む

楽器本体の中から深い音が生まれてくる

─やはり古い楽器をお使いなんでしょうか?
三宅/僕のは1735年のベネツィア製です。バッハが亡くなる前の時代ですね。
吉岡/僕のは年代がずっと下がってモダンといわれる時代のもの。1902年製。ローマで作られたものです。
三宅/古いからいいというわけでもないですよ。チェロはもともと、足の間にはさんだり、横にかかえたりして弾いていたんですね。楽器本体を立てるエンドピンが付いたのは、1800年代の中頃。エンドピンが発明されたことで、安定させて弾くことができるようになって音量も飛躍的にのび、技術的にも色々なことができるようになったんだと思います。当時はまだヴィオラ・ダ・ガンバが全盛の時代。時間をかけて取って代わっていったんですね。
チェロは1700年代に作られた楽器でも、規格はほぼ決まっているんです。裏板の長さが大体73センチから76センチくらいにおさまっています。
吉岡/弾いていると、よくこの裏板が振動して体にうぁーっと伝わってきて、よく鳴っているときは本当に気持ちがいいんです。
三宅/鳴っているのは弾くとすぐ鳴る直接音ではなくて、空気の振動が裏板にまわっていって、ちょっと時間をかけてあの深い響が生まれてくる。それがチェロの魅力ですね。チェロ好きだったのはブラームス。ここぞというときに、チェロが登場します。
吉岡/ブラームスのピアノ協奏曲2番の3楽章の冒頭は、チェロのソロとピアノだけで進行します。チェロ弾きにはあこがれの一曲ですね。

弦と弓を使いこなす要は親指

─弦も太そうですね。
三宅/張力は強いですね。演奏上、特に大切なのは親指。左右とも親指をどう上手に使えるかがカギだと思います。弦はスチールとガットとあるんですが、ガットは音はいいけど湿度が高かったりするとどんどん狂ってしまう。一度、マーラーの交響曲の本番中にそうなって、あせったことがあります。ガット弦は高価だから長く使うし、それにまた切れ際の音がいいとかいったりするんだよね(笑)
吉岡/今は、タングステンとか希少金属の弦も出てきてるんですよ。オーケストラの中ではスチールが現実的ですね。今はどんどんいいものができてるし。
三宅/スチール弦でも、ブラームスの交響曲1番でピチカートを思いきり弾いたら、そのあとの4楽章で一番太いC線が切れたことがあります(笑)。
吉岡/普通、そんなに切れるものではないですよ(笑)。
三宅/弓の毛は消耗品です。馬の毛が220~230本ぐらい張ってあるんですが、2ヶ月でだめになってしまう。今日の稽古でもさんざん切れちゃって、本番どうしよう(笑)。張り替えは自分でできるものではありません。
吉岡/楽器はみんな、かかりつけのお医者さんのような専門家に頼んでみてもらっています。
三宅/弓の木はフェルナンブーコというブラジルに自生する豆科の植物が、ダントツにいいんです。これは誰が聴いてもびっくりするくらい違う。それが今はワシントン条約で輸出が難しくなっていて…。
吉岡/カーボンの弓がつくられたりしていますけどね…。

チェロがまとまり音楽の流れをつくる

─オーケストラでのチェロの役割は?
三宅/ソロもこなすしバスも支える、オールマイティな楽器ですね。金管、木管と同じメロディを弾くこともあるし、中でも音域的に重なるホルンやファゴットといっしょに動くことが多いですね。
吉岡/やはりベースラインの基本はチェロだと思います。コントラバスを含め、このベースラインにみんなに乗ってもらい流れをつくっていくのが役割ですね。
三宅/頭の音の入り方は僕らが決めているところがあります。いわば司令塔ですね。「ここで入りますよ」という旗印を掲げて、チェロがまとまって内声とやりとりしながらメロディにその流れを波及させていくんです。
吉岡/海外のオーケストラでは、チェロコンサートマスターというポジションがあるくらい。いわゆるコンサートマスターのほかにこうした役割を担っているのはチェロくらいでしょう。オケの中では本当に大事な役割を果たしているんだと思います。
三宅/だから、演奏について僕ら2人でよく話をします。ヴァイオリン、ヴィオラともずいぶんとやりとりするしね。
吉岡/これから?僕はオペラが好きなんですね。「トスカ」の「星は光りぬ」の前のところにはチェロ4本のアンサンブルがあるんですよ。ぜひ弾いてみたいですよ。バレエの曲もいいですね。
三宅/僕は長いことやってきたので、これから大事なのは何でもとにかく決めつけないで取り組むことかな。メンバーと話しながらね。仙台フィルは実に幸せなオケですよ。ゆっくりと話し合いながら、みんなで同じ方向をめざしていけるから。


チェロ01
吉岡さんのチェロ。チェロを始めてから3代目の楽器だという。ちなみに三宅さんの相棒は現在8代目。
チェロ02
間近で見ると、駒は想像以上に高い。テンションの高いスチール弦をしっかりと支える。

みやけ すすむ 仙台フィル チェロソロ首席奏者。桐朋学園大学卒業後、インディアナ大学に留学。帰国後は群馬交響楽団首席奏者を務めた後、フリーで活躍。武蔵野音大で後進の指導にもあたる。2012年入団。

よしおか ともひろ 仙台フィル チェロ首席奏者。桐朋学園大学を卒業後、ライプツィヒ音楽演劇大学大学院に留学。卒業後はライプツィヒ・ゲヴァントハウスオーケストラアカデミーに在籍。2014年入団。

第324回定期演奏会(2019年1月25日,26日)プログラムより

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