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異種楽器対談

第37回、第38回
オーボエの鈴木繁さん、ヴァイオリンの松山古流さん
オーボエの鈴木繁さんが、ヴァイオリンの松山古流(まつやまこりゅう)さんになにやら尋ねています

鈴木
(鈴木)これ、すごいね。(ヴァイオリンのコレクションは)何挺ある?
松山
(松山)最近数えてないけど…60本ぐらいかな?それでも大分減ったよ。どうしても手に入れたい楽器があって、何本かまとめて交換したり。修理を待ってる楽器もある。お金が続かないからね。
鈴木
ひどいのを買って修理するっていうことも?
松山
うん。オークションとかね。オークションって、壊れて直らないって言われたのを安く売っちゃおうっていう人が結構いて。
鈴木
でもそういうのって仕事で使ってないでしょう?
松山
仕事で使えるようになったのもいっぱいあるよ。1回取り引きがあった人は「こんな楽器あったけどどうだ」って連絡くれるんですよ。インターネットで売り買いされてるのはやっぱり、ジャンクっていうか壊れたのばっかりだけど。
鈴木
うまくいったら逆に、儲かったりするわけ?
松山
そういうのもある。例えば、表板(おもていた)がぐちゃぐちゃになった楽器を、飾りにしようと思って買ったんだよ。そしたら売ってくれた人から「同じ人が作った楽器で、表板が大丈夫で裏板が壊れたのがあるから、前買ったやつと合わせろ」って言われて、買ったことがある。ほんとにぴったり合ったよ。古い楽器って、大きい音は出なかったりするけども、やっぱり音色がものすごくいいんだよね。今はほら、ある程度の音量出ないとみんな見向きもしないとこあるから、自分ひとりで弾いて楽しむにはいいんだよね。
鈴木
このまえあるアマチュアのオーケストラの定期演奏会聴きに行ったんだけど、思ったほど音量無いんだよね。
松山
要するに、僕らの弾いてるのと、パワーが違うんだよ。楽器云々じゃなくて、向こうは割とこぢんまりと、きれいないい音でっていうのをポリシーにしてやってるから。本当はそういう方が、僕は興味あるんだけど。
鈴木
管楽器もそうだけど、今の楽器は音が大きくなるように改良されてるね。
松山
音色と音量とが比例した楽器っていうのは、めちゃくちゃ高くなっちゃうんだよね。今はどっちかっていうと音色は自分で作りゃいいっていうことで、パワーある楽器の方が持てはやされてる。
鈴木
ヴァイオリンはいつぐらいにできあがったの?
松山
まともな形…このヴァイオリンの形なんだけど、これができあがったのが1550年ぐらいかな。ストラディヴァリウスの師匠だったアマティっていう人の親の代だと思う。突然この形になったんだよ。
鈴木
あ、そうなんだ。
松山
それより前はヴィオル属っていう、カブトムシみたいな形…ヴィオラ・ダ・ガンバとか。そっち系の形だったのが、どの文献見ても、突然この形が出現して、そこから色々改良しようとしたんだけどダメで。音を大きくするために中の構造をちょっと変えたり、ネック(=左手で持つ細い部分)の長さを変えたりっていうのはやってるんだけど。
鈴木
俺達から見ると、よくもこう…指4本でしょう?
松山
うん。使う指はね。
鈴木
あれで、ああいうことをするっていうのは、すごいなと思うよ。
松山
だって三味線だって3本弦で…。
鈴木
ハハハッ。そう言われてみりゃそうだけど。よくあんな速いのを4本の指だけで…相当な感覚だよなあ。ちっちゃい時からやってないと無理なんだよなあ。弦楽器だけなんだよね、右手と左手でやってることが違うっていうのは。俺達管楽器は大体同じですよ。金管で片手中心っていうのはあるけど。それに比べりゃとんでもない。…どっちで歌うんだっけ。左手で歌う?
松山
右手で表情作ったりする。でも根本的には「動き」だから、右も左も一致してるんだよね。一致するように弾かないといけない。
鈴木
逆って居るの?
松山
左利きの人が逆に持つっていうこと?あのチャップリンがそうだよ。
鈴木
オーケストラには入れない?
松山
いやー、弓が交差して邪魔でしょうがない(笑)基本的には、どっちでも同じはずなんだけど、もし本当にやるんであればヴァイオリンの構造を変えなきゃならない。一番線から四番線の順序を逆にしないといけないでしょ。中の構造も変えないといけない。
鈴木
右手用に作ってあるの?
松山
そう。左の手で楽器を持つように作ってある。「あご当て」って上に黒いものありますよね。あれの位置も左側。ものによっては真ん中に付いてるのもあるけども、基本的には左。そういう風に作る。左利きの人もこれに慣れて弾いていく。
鈴木
法隆寺ってさ、1400年前の木が、今まだ60%もそのまま使われてるんだって。それで、その木はさらに3000年前の木なんだって。すっごい太い木だよ。その外側を削って中の部分だけを使ってるから柱に節が無いんだよ。
松山
昔はそういう材料があったんだよ。樹齢ってのは、例えば300年なら300年ありますよね。それを伐採して製品にして、いい条件で保存すれば300年もつのが、一番いい材料だよ。
鈴木
3000年たった木は3000年もつっていうよね。
松山
この間、子ども達に楽器のお話するのに、「自分の使ってる楽器は徳川吉宗の時代に作られた」って言った。テレビで見る「暴れん坊将軍」とかさ、「水戸黄門」とか。あの時代なんだよね。
鈴木
それとってもわかりやすいね。
鈴木
弦楽器系は木が全てじゃん。まあ、管楽器もそうだけど。やっぱりこう、いい木が無くなってきてるんだろうなって思うよねえ。安いのはさ、ちょっとなんかねえ…変なのよ、木が。ちょっと痣(あざ)があるようなさ。
松山
今、木に合成樹脂を染み込ませて強度っていうか、密度を出してるものがいっぱいでてるんだよね。弓なんかはもう、典型だよ。昔は、自分の息子や孫の代まで使うために木をずーっと乾燥させて使ってたんだけど、今はそういうことはもうできない。モノが無くて。
鈴木
どうなっていくの?それは。
松山
最近カーボン製の弓とか出たでしょう。…あとはやっぱり、好みが変わっていくからね。前にも言ったように、音色よりも大きい音とか、他をかき分けて聴こえる音とか。
松山
意外と知らない人が多いんだけど、同じ人が調整した楽器のほうが、統一感が出るんだよね。弾く人の好みもあるんだろうけど。ウィーンフィルなんかだと、専属の調整する人っているじゃない。あれはもう伝統的なもんなんじゃないかな。
鈴木
定年になったらさ、そういう道もあるんだよね。オケのさ、調整を…(笑)
松山
いやー、みんなの使ってる楽器は怖くて触れないよ。何かあったら、どうしようもないもん。自分の楽器だったら何でもやるけど。
鈴木
(ヴァイオリンは)お湯に入れるとバラバラになるんだって?
松山
そうそう、ほんとほんと。ニカワっていう接着剤だけでくっついてるから。
鈴木
ニカワって何でしたっけ?
松山
動物の軟骨はベタベタするじゃないですか。あれの成分なんです。昔は硬い、細長い棒状のやつを湯煎で溶かして使ったけど、今は顆粒状の簡単なのがあるの。あれ臭いんだよすっごく。下手にやると、今度は外して直そうっていう時になかなか外れなかったりして大変なんだよ。うんと薄いやつできっちり付けると本当に丈夫になる。でも温度の変化にはものすごく弱いんだよね。外から持ってきて暖かい部屋でケース開けたりすると、それだけで割れたりする。
松山
この、ラッパの付いたヴァイオリンなんていうのは、蓄音機の変形なんだよね。
鈴木
これは…遊びで作ったのかね。
松山
いや、ストロー・ヴァイオリンとかホーン・ヴァイオリンって言うんだけど、昔、マイクの性能が良くなかった頃、マイクに向かって音を出すために…。
鈴木
ああー、そう!
松山
マイクに向かって微動だにせず弾いてる写真とか見たことあるよ。
鈴木
弾きづらくない?これ。重いでしょ。
松山
うん、重いし…下に肩当てにあたる部分が付いてたらしいんだけど、それは無くなって。
鈴木
今、楽器メーカーのワクしかない楽器があるじゃん。
松山
エレクトリック・ヴァイオリンね。
鈴木
あれって誰が弾いても変な音がしないって言うじゃん。どう弾いてもいい音がするって。
松山
要するに、雑音が聴こえてこないっていうだけで、出てはいる。普通のヴァイオリンの場合は、雑音も含めて楽器本体で音を増幅してるでしょ?エレクトリック・ヴァイオリンの場合は、音の振動だけをピックアップで拾ってるわけだから、雑な音はカットしちゃってるんじゃない?そっち方面はどんどん便利になっていって、音程まで修正されるようになってくんじゃないの?(笑)
鈴木
そうか(笑)
松山
楽器の音ってのは息づかいと一緒だから。本物は残ってくんだよ。
鈴木
いま仕事で使ってる楽器は何本あるの。
松山
5、6本ある。すぐ使えるやつはね。やっぱりほら、用途によって使い易い楽器があるわけ。オケに使い易いとか、カルテットに使い易いとか、一人で行く時にいいとか。
鈴木
そういう意味じゃ、俺はずっと1本だもんな。
松山
それだけ1本を大切にしてるんだよ。
鈴木
かなりの本数になるでしょう。
松山
今まで使った楽器?
鈴木
うんうん。
松山
楽器、色々弾かせてもらうの好きなんで、知らない人にも「ちょっと楽器見せてください」とか言って声かけて、見せてもらったり。ストラディヴァリウスも、音量っていう点では小さいけど、音色とか音の伸びっていうのはすごくいい楽器。だから、そういう楽器はそういう用途で使えばいいんだよ。綺麗な音の出る楽器で、簡単な曲を弾いて自分で楽しむ人が増えるといいね。今はみんな、難しい曲を弾こうとするじゃない、子どもたちでももっと楽しむっていう方にウェイトが行けばいい。今の世の中は、「上手い」の基準が「難しいのを弾ける」っていう風になってるから良くないんだよね。
鈴木
あとね、ニスの話聞きたかったんだよ。色が違うっていうじゃない。あれって、薬…?
松山
要するにほら、昔の染料と一緒で…。
鈴木
秘密があるわけでしょ?
松山
秘密っていうのは…そういう風によく言われてるけど、僕も詳しくはないけど、そういうものは無いに等しいよ。
鈴木
ああそう。でも塗るものなんかで違ってくるんでしょう?
松山
塗るものの硬さなり、経年変化なり。真っ黒い楽器ってあるじゃないですか。あれって昔は真っ赤っかの楽器だったらしいですよ。何かの成分が経年変化で真っ黒くなっちゃって。
鈴木
大体、何が入ってんの?一般的なのは。
松山
いやー、分かんない。クチナシの染料って、黄色い染料あるじゃないですか。ああいうやつで下地を綺麗に塗って、その上に何回もニスを重ね塗りしていく。普通は15、6回。
鈴木
漆(うるし)なんかだとダメかな。
松山
漆はね、硬過ぎて、音が…振動が止まっちゃう。飾りにするにはいいんですけど。同級生で漆器屋がいて、やってもらったことがあるんです(笑)もともとニスっていうのは、楽器を保護するっていう意味と、見た目が格好良く、素敵に見えるっていうのがある。裏板なんかで、虎の模様みたいなのがあるじゃないですか。あれ使うの、ああいう材料が音に適しているっていうので使うんだけれども、その木目が浮き立って見えるようにすためには、透明感のあるニスのほうがいいわけでしょう?今は、わざわざそれをプリントして使ってる楽器もあるんだよね。全く無地の楽器にね。

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