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異種楽器対談

第33回、第34回
オーボエの木立至さん、ヴァイオリンの岡村映武さん
オーボエの木立至(きだち いたる)さんが、ヴァイオリンの岡村映武(おかむら てるたけ)さんになにやら尋ねています

木立
(木立)セカンドやってて、自分のタイミングとか自分の音程の感じとか歌いまわしとかで弾けないと、ストレスって溜まらない?
岡村
(岡村)僕はセカンド・ヴァイオリンが好きだから、こっちがあってるからそんなストレスは溜まんない。セカンドだからストレスが溜まるということは無いですね。
木立
僕もセカンド好きなんだけどね。でも自分のペースで弾けないっていうのは出てくるじゃないですか。どうなのかな、セカンド・ヴァイオリンとファースト・ヴァイオリンて。
岡村
 弦楽器だから、他のヴィオラとかチェロとかコントラバスとどう関わっていくか…だから、ファーストと、まず合わせる、っていうイメージがあんまりないですね、僕は。
木立
俺達は一人一人のだからさ。
岡村
 逆にしんどいんじゃないですか?
木立
でも合わせる楽しさはまた格別だけどね。俺達一人同士とか、木管でも2管だったら8人だけどさ、それでもタイミングとか合わせるの難しいのに、いっつも弦の人見ててすごいなと思うのは、一糸乱れぬところとかさ、あれすごいよ。
岡村
 (笑)一糸乱れぬ…。
木立
だって10人とか12人とかが、それとなしに合ってるじゃない?あれってすごいよね。
岡村
個々の個性っていうのは、あんまり出さないというか、出せないというか。逆に、頭(=首席奏者)に合わすとか、コンマスに合わすとか、指揮者に合わせるとか、合わせるという方にいっちゃうかな。
木立
でも、自分の個性も出しながらぴたっと合うと一番良いよね
岡村
 テュッティ(=全奏。オーケストラやパートの全員が一斉に演奏している状態。)で弾いてると、僕だったらこう弾きたいなって思っても、やっぱり頭が付けたボーイングとか弾き方が違うってなると、それはもう自分の個性はさておき、やっぱり頭の人の音楽に合わせるのが仕事だと思うから、それでストレスということは無いですね。もし自分がそこに座ったらこう弾くだろうなってい思うことはあるけど。でも、やっぱり指揮者でも、同じ曲でも全然違うことをしてくれるから楽しいじゃない?だから毎回何か自分と違うことがあっても全然ストレスじゃないし、楽しいし。セカンド好きですね。もうほんと、楽しい。
木立
僕もほんと好きですね。一番楽屋受けするパートじゃないですか?お客さまにはあまり分からない部分で。僕もセカンド好き。僕もそんなにストレスは無いんだけど、やっぱりソロも吹いててオケもやって、アンサンブルもやって、色々やってると、時々オケやってて欲求不満になる時もあるんだよ。ああやって大人数で一つのパート作り上げるのって、みんなどういう風な気持ちでやってるのかなって、興味があったんだけど。
岡村
 合わせるの元々楽しいから。
木立
あとね、俺達管楽器って指揮がよく見えるんだよ。譜面見てても譜面台越しに指揮が見えるけど、弦の人達って横から見たり、綺麗な図形なんて見えないんでしょ?
岡村
 見えない見えない!だって正面から見たら逆に綺麗な図形なんだって思うくらい。
木立
俺達変拍子(=例えば5拍子。2拍子と3拍子の図形を組み合わせて振る。)でも綺麗な図形に見えるもん。あれ横から見たら1拍子だよね。オペラの時とかピットに入ってファースト・ヴァイオリンの後ろに入った時なんか、まったく普段と違って1拍子にしか見えないから、ああこうやって見てるんだなぁ、弦の人って。
岡村
 僕セカンドだから前の方に行ったりすると正面から見えるし、普段の所からだと違って見えるし、入団してすぐファーストの一番後ろで弾いてたときは、それはまた全然違う場所で見えるし。学生の時とかはヴィオラも弾かされるから、ヴィオラの位置からも見たこともあるし。対向配置(=セカンド・ヴァイオリンが上手にくる並び方。)になったらその位置からも弾けたりするし。だからけっこう見え方はそれぞれ違うけど…でもわかるかなぁ、意味は。いい指揮者なら!なんて。
木立
そうだよねぇ。俺達はそういう見えないっていう苦労は、前の人が座高が高い場合だけでさぁ、一直線上に譜面とコンサートマスターと指揮者が視界に入るんだから、楽だよぉ。
岡村
 だから、やっぱり僕らは座る時に気にしますよね。必ず指揮者が見えて首席が見えて、コンサートマスターが見える、もちろん直視するんじゃなくて、なんとか視界に入るようにという場所を探してやりますけど。後ろの人から「ちょっと見えないからどっちかに寄って」って言われることはあるけど、それはそれぞれがちゃんと見なければいけないから、後ろからそう言われても然るべきことだと思うし。みんなそれぞれ一人ずつはそれを考えて座ってるんだと思うんですよね。
木立
もうちょっと舞台が広いといいんだけどね。大きなホールだともっとね…。
岡村
 そうですよねぇ。オーケストラ用のホールが欲しいです!ほんとにほんとに。ヴァイオリンとか弦楽器の後ろの方になると、折り返しが(=ホールが狭いと一列に並べないので後ろだけ二列になる。)、あぁ今日はそこで折り返すんだーとか、一番後ろなんだーって、僕は後ろで弾いてた時は結構それによって惑わされるというか。おっきな編成になったから後ろに無理矢理詰められたりとか、小さい編成になったら前に行けたり…、ホールが小さいと音だけじゃなく、いろいろ問題が出てくるかなぁとは思いますね。練習場によっては反響板全部上げて、一番後ろの、見えないんじゃないのっていう所で練習しないといけない時もあるし。「コンサ-トホール」で演奏できるのは有難いし良い響きだけど、もう少し大きかったら理想的でしたよね。
木立
そうだよねぇ。響きが飽和状態で、辛い時がある。
岡村
 オケが大きくなると厳しいんだなぁ。室内楽だといいホールなんだよね。
木立
セカンドって今12人なの?
岡村
 そうですね。
木立
定期(演奏会)で降り番が無い弦楽器って信じらんない。
岡村
 曲降り(=演目によって編成が小さくなること。)回って来ただけでやったー!って。久々に降りられるんだぁーって。でも曲降りがすごく嫌に思う時もある。やっぱりテンションが下がるというか、一曲目やって、で曲降りでその後休憩挟んで、で最後の曲とかになると一回上げたテンションが下がってきて、それをまた急に上げるっていうのは結構大変なところがある。
木立
俺達もメインだけの時とか、メインでいきなりソロだけとかって、ほんとに飲み会で後から遅れてくるみたいでさ。やっぱつらいよー、ピッチもテンションも上がってなくて。
岡村
 周りはテンション上がってるからね。
木立
周りはすごいからね。集中力が切れちゃうっていう所もある。それだったら全部乗ってたほうがコンディションもいいっていうのはある。
岡村
 難しい曲の時は降りてラッキーかなぁって思う時もあるけど。やっぱりそういうコントロールが難しいですよね。
木立
弦楽器の弦てさ、うちのオケってあんまり切れないよね。あれってそろそろマズいとかわかるの?
岡村
 わかります、わかります。人によって練習量とか汗のかきかたとか脂性の人とか、そういうのがあるから、だいたい今まで経験して来てこの弦だと1ヶ月が限度かなぁとか、2ヶ月が限度かなぁとかもあるし。ほんとに直近にマズくなるとホツレてくる。それはかなり、もう切れるっていうのはわかる。
木立
でもほつれる前にだいたいみんなわかるんだ。音とかに変化はあるの?
岡村
 かなりありますね。音が詰まってくるっていうか。
木立
でも新しい弦だからいいっていうわけじゃないんでしょ?
岡村
 新しい弦も張りたては、まだ音が固かったり伸びるまでに少し時間が。これも弦の種類によって伸び方が違うんですけど、張りたても嫌な音がするし、僕は個人的にあんまり好きじゃないし。あと絶頂期があるんですよ。絶頂期を過ぎていくと、どんどん落ちていって、でもずーっとそれを弾いてるわけだから落ちてきているのを聴き逃す時もあって、「これでもなっているんだろうなぁ」って思ってしまうときもあるけども、やっぱり弦替えると「ああ、もっと早く替えればよかった」って思うこともある。だいたい、みんなはどうなのか分からないけど時期、時間で決めてるとは思うんだけど。一本だけ、この弦だけ調子悪くなってきてから替えようというタイプでは僕はないので。
木立
セットで替える物なの?
岡村
 あ、替える時は僕は全部替えますけど。僕はそういうタイプ。人によってまちまちだと思います。一番細いE線とかだったら何週間で終りという人もいれば、普通に1ヶ月2ヶ月他の弦と一緒に使ってても大丈夫という人もいれば。やっぱりそのとき弾く曲とかで変わってくるんですけどね。
木立
俺達のリードもしょっちゅうだから。演奏会のたんびにローテーション組んでさ、この演奏会にはこのリード使おうとか。定期なんて3日リハーサルあって2日本番あるから、リードの選択間違うとエラいことになる。本番にベストにならないといけないから。リハーサルでどんなによくても本番でへばっちゃうといけないから。だから選択はみんな注意してる。
岡村
 そっちのほうが大変そうだな。
木立
今作っているリードはこの先の一週間後の演奏会に、とかみんな計画立てて作ってるんだけど。でも計画が狂うんだよ。
岡村
 弦の場合それはないよね。オケだとずーっと仕事してるから、どっかの演奏会に向けてってしてしまうと、練習とか弦替えたばっかりだと音も狂い易いし、伸びる前だから。そうなると、休みの間に替えてしまって、弾いて丁度良くして、とにかく次の本番にってなってしまうから、やっぱり演奏会の本番に向けてっていう短いスパンではなかなか替えられないかな。お金も…。消耗品手当てもっといただければ毎回替えますけど…(笑)
木立
楽器のメンテナンスって定期的にするものなの?なんかお米入れたりしない?
岡村
 (笑)それもメンテナンスなんでしょうけど…。
木立
掃除か、あれは。
岡村
 掃除掃除。あれは楽器の中に埃が溜まってくるんですよ。埃が綺麗に丸くなって、西部劇のあの転がるやつみたいな、それを取るのに、昔はお米をちょっと入れて振って、周りに付いてる埃を取って一緒に出すって言ってたらしいんだけど、楽器屋さんによっては、それをやってると楽器の魂柱がずれてくるので良くないって言う人もいるし…。知らない人が聞いたらお米炊いていれちゃうかもね。炊いたら出て来なくなる(笑)メンテナンスは僕はあんまりこだわりがなくて、弓の毛替えをした時ついでに、楽器もちょっと見といてくださいみたいな。そのくらいしかしないですね。音が変わったからすぐに楽器屋さんにっていうタイプではない。自分の弾き方がまずいんじゃないかって、まず思うタイプだから。メンテナンスは逆に管楽器の人の方がしてるんじゃない?
木立
ああそうだろうね。
木立
モーツァルトとかやってると、一緒のパート多いんだよね。セカンド・ヴァイオリンとセカンド・オーボエ。コール・アングレなんかもヴィオラかチェロ、ヴィオラと一緒っていうの多いんだよね。
岡村
 メロディで一緒になると辛そうだよね。ずれるって言ったら失礼だけど、そう聴こえるのは距離感のせいかな?うちの場合ヴィオラが外側だから。そういった意味では管楽器とか打楽器の人ってすごいと思う。早めに出すというか、前に届く音の早さとか考えて吹くんですか?
木立
…してる人はしてるんじゃない?(笑)音出すのって怖い時あるじゃない?管楽器って音出すの、発音怖いんだよね、ダブルリード(=オーボエ、ファゴットなど、歌口が2枚のリードでできている楽器。)とか金管楽器って。特にダブルリードなんて一番、度胸決めて、はいっ!って吹かないと。クラリネットみたいにモアッと出られないから。
岡村
 (笑)クラリネットの人に悪いじゃない。
木立
いやいやそんなことないよ。クラリネットは後から響きを付けてくるから。俺達、点だから。
岡村
 弦楽器って前にいるけど、たまに後ろの方に座って前見ると、管の人って、ああこんな風に見てるんだぁって不思議。
木立
僕ら、特に金管とか打楽器の人って全部オーケストラ見渡せるけど、弦の人って振り返れないじゃない?
岡村
 僕は見るけどね、なんて(笑)
木立
なんか振り返られると、怒られてる気分になるからさ。
岡村
 セカンド・ヴァイオリンだと、1プルト(=本来は譜面台の意味。弦楽器は2人1組で並ぶので、その組の番号。)に来ると振り返らないと見えないからそれは不可能ですね。よっぽど何か面白いことがあったら振り返るけど。
木立
間違ったからって振り返られないね。
岡村
 学生オケみたいにね。
木立
あるオケで喧嘩してるの見たことある。セカンドのトップの人が管楽器振り返って管楽器の人と喧嘩してたから、おおすげーなぁって。内容は振り返るなっていう喧嘩(笑)こっちいちいち見るなよ!っていう喧嘩だったから面白かった。
岡村
 学生オケって言えば、うちの大学の場合、付属のちっちゃい子供達のオケもあったんですよ。で、大学の3回生になるとヴィオラを弾きに行かされるのね、そこのオケに。管楽器も大学生なんですよ。で弦楽器だけちびっこ天才少年少女達がいて、で、曲やると管楽器が音外すたびに子供達全員がこう振り返って、なにやってんだーって(笑)あれ可哀想だったなぁ。別に悪気はなく「え?なんで外れたの?」「何かあったの?」っていう純粋な気持ちだと思うんですよ。決して「何やってんだ」って意味ではないと思うんですよね。今度みんなでやってみる?(笑)
木立
いやーおっかないなぁ…。
木立
ヴァイオリンの人ってヴィオラも弾けるの?みんな。
岡村
 ヴィオラやってる人って少ないから、ほんとはヴァイオリンだけど手伝いでヴィオラ弾いてっていうことはあるけど。そこでヴィオラと出会って、ヴァイオリン辞めてヴィオラに行かれる方もいるし。ただ、ヴァイオリンをやりながら、器用な人はプロオケにヴィオラでトラ(=エキストラ。客演。)に行ったりする人もいたんだけど、僕はそれはある意味楽器が違うから失礼かなと思って。あんまり好きじゃない。
木立
僕も友達に聞いたけど、アメリカのどこだかのオケのコンサートマスターが、そこのオケが仕事少なくなって休団状態で、仕事がないから他のメジャーオーケストラのヴィオラのテュッティ(=全奏。この場合は首席に対する一般楽員。)で入ったっていう。
岡村
 (笑)
木立
そんなことありなのかぁって思って。
岡村
 でもねぇ、日本のオーケストラでもいらっしゃいますよね。コンサートマスターだけどヴィオラの首席で行かれる方も。まぁ両方弾けたに越したことはないんだろうけど。やっぱりヴァイオリンとヴィオラではちょっと音の出し方とか違うと思うし。ヴァイオリンの人がヴィオラ弾くと、ヴィオラなんだけどヴァイオリンみたいな音がしたり。ちょっと違うんですよね。楽譜も違うし、押さえて出る音も違うから、ちょっと大変なんですけど。
木立
だいたいあのハ音記号が読めないもん。
岡村
 読めないですね。僕は全然読めなかった。楽譜に指番号必死で書きましたもん。
木立
あれおかしい、あの記号。
岡村
 あの記号がおかしいことはないけど(笑)ヴィオラの人に失礼だよ(笑)
木立
加線何本でも読める?俺達3本以上になると、ラドミとかいってわかんないよ(笑)ソとかから上になると、「え、これなぁに?」って。
岡村
 セカンドだからそんなに高いの出てこないよ。
木立
一応上は無限なんだよね?
岡村
 無限ではないけど。あんまり高いとファーストの領域を侵すことになるから。それ以上来るな!って(笑)
木立
だいたい五線の中に収まることが多いの?
岡村
 上ちょっと出るくらい。下もちょっと出るくらい。ちょうど見易い所だから。下も一応ソだけど、リヒャルト(シュトラウス)とかになると調弦を半音下ろしてとかいうこともあるし…。
木立
音域はオーボエとかぶるんだよね、ヴァイオリンと。
岡村
 …セカンド同士話してなんか面白いのかな。
木立
地味だからね。仕事として地味だからね。
岡村
 だけど大事だからね。メロディを生かすも殺すもセカンド次第。セカンドだけが思ってることかもしれないけどね。
木立
(笑)ファーストは思ってないから。ハーモニー決まった時って気持ちいいよねぇ。
岡村
 ねぇー。
木立
なんか軽さが出てさ、軽やかなメロディを演奏してるような時とかって、この伴奏は俺達だよっ!ってね。
岡村
 お前らが生きてんのは俺らのおかげだ!って思うよね。
木立
そこまでは言わないけどね(笑)
岡村
 いや思うけどなぁ。ハーモニー決まらなかったらメロディも生きてこないから。そういうの好きじゃなかったらセカンドとかできないよね。
木立
違った楽しみ方ができるパートというのも、セカンドの良い所ですよね。

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