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異種楽器対談

第13回、第14回
チェロの北村健さん、打楽器の竹内将也さん
チェロの北村健さんが、打楽器の竹内将也さんになにやら尋ねています。

北村
仙台に来たきっかけはなんですか。
竹内
オーケストラでティンパニを演奏出来る環境っていうのはなかなか多くないですから、そのなかで演奏するチャンスがあったっていうのが一番大きいでしょうね。それまでは2年間エジプトにいましたけど。
北村
またどうしてエジプトなんですか。
竹内
それはひょんなきっかけで私のお師匠さんから勧められて。エジプトに打楽器の先生がいないから誰か来てくれないかって日本に相談があって。で、行くことになりました。
北村
打楽器の先生がいないって事は、エジプトには音楽大学があるっていう事ですか。
竹内
ええ、カイロ音楽院っていうのがありまして、それがエジプト唯一の音楽大学です。他の科も大抵揃っているんですよ。もちろんチェロもありますし、弦楽器は全部あるし、ハープもあるし。で、打楽器もあったんですけど、先生がいなくて、ほとんどそれまでは高校の部活動みたいな状態だったらしいんです。エジプト人ってアラブの民族に属するんですけど、自分達の音楽をもってるじゃないですか。アラビア音楽というものを。そうすると彼等の音楽で使われる太鼓とかはすごく得意だし、自分達の生活に入ってるんですけど、でも、こと西洋音楽ってなると、どうも違う。そういう意味では同じ視点、要するにヨーロッパ人ではない人間が外から西洋音楽を見てっていうアプローチっていうのが、エジプトも日本も同じかなと思って。それでトライする事にしたんですけど。
北村
なるほどね。それで、教えていって、ゆくゆくはティンパニ奏者としてオーケストラで活躍したいと。
竹内
はい。エジプトにもカイロ交響楽団とカイロオペラオーケストラという2つのオーケストラがあるんですけど、そこでなるべく演奏もできないかと交渉してきたんですけど、どうしても学生がたくさんいるとずーっと教えていなくちゃならなくて。オーケストラをやるチャンスがなかなかなくて。もともと僕はオーケストラ大好きで、そこでティンパニやりたいっていう人間でしたから、やっぱり演奏の機会が欲しいなぁと。そんなところに仙台フィルのオーディション情報頂いて。
北村
それで仙台に来て今に至ったと。
竹内
ええ、まあ今に至ったといってもまだ1年経ったところなんですけど。
北村
1年経って、だいぶ慣れてきたんじゃないですか。
竹内
もちろん入ってすぐっていうのは右も左も分からない状態で始まって、でも少しずつ自分なりに見えてくる感じで。あと、最初に思ったのは、前にいらしたクイスマさんていう素晴らしいティンパニ奏者、あの人の影響っていうのが仙台フィルには根強く残ってたんだなぁっていうのが、毎回演奏する度に感じてましたね。
北村
それは具体的に例えばどういうところがですか。
竹内
ティンパニに対する耳がすごく厳しいですよね。人によって音色の作り方とか、バチの選び方っていうのにセンスって出てくるんですけども、クイスマさんのやられてた趣向っていうのが皆さん耳に残ってますでしょ、そういう状態で新しく自分が来てやってみると、どうしても人が違いますしね。クイスマさんだったらどういう風にやったんだろうな、というような事を言われたり、実際自分でも感じたりっていう。まぁ、コンプレックスとまでは言わないですけれども。
北村
僕もクイスマさんが退団される時に、御自身が作ったティンパニコンチェルトを演奏しまして。バチがいっぱいあるケースを持ってこられて、これで音をだすんだーって。僕はチェロなんで前の方にいるからなかなか後ろ振り向いて見るっていう事ないけど、前の方にティンパニ置かれて、いろいろな作業とか、やる前にいろいろチェックがあるんだなっていうことがわかってびっくりしてたんです。
竹内
ティンパニていうのは、例えば弦楽器とか、チェロもそうでしょうけど、楽器に対して弓はそんなに種類ないじゃないですか。1つの弓でほとんど全ての曲に対応される。それが理想だと思うんですけど、打楽器の場合は材質っていうのが影響するんですよね。バチでも木、竹、材質で音色が違ってきますし、バチの頭に巻いているフェルトの質とかでも違ってくる。フェルトの中にはコルクが入ってたり、木が入ってたり・・・打楽器全部そうなんですけど、会場の響き方によって打楽器の音色ってずいぶん印象が変わって聞こえてくるもんで、随時行った所のホールにかなう音色、効果的な音を選ぶ必要があるんです。
北村
例えば演奏中に自分のイメージと違うって気付いた時ってあるんですか。
竹内
もちろんたくさんあります。
北村
そういう時はどうするんですか。本番中に変えるとか、そういう事はあるんですか。
竹内
ありますよ。基本的に一曲で一種類のバチっていう事は無いですから、場合に応じて使い分けしますし。リハーサルの時にここの所ではこのバチでいこうと決めたとしても、いざ本番が始まるとお客さんが入りますよね。そうすると響きも変わってくるし、オーケストラのコンディションも変わってきたりすると、ああ、ここはこれでいかない方がいいかなと思って変えてみたりしたことも多々あります
北村
そのへんのプロフェッショナルな所は、どういう具合に操作すればどういう音が出るのかっていうのがなかなかわからないところなんですけど。
竹内
そうですね、自分でも説明しろといわれてもなかなかね。皆さんそれぞれの楽器の専門の方っていうのが、それぞれの工夫を長年お師匠さんから習ってっていうのがあるでしょうから、それはまったく打楽器も一緒で。一口で言えないんですけど。
北村
ああそうですか。
竹内
でも楽器を鳴らす事って大事ですよね。太鼓って構造が簡単じゃないですか。ティンパニの場合はお釜があって皮が張ってあるだけなんで。そこをコンって打てば鳴るっていうね。太鼓は打てば鳴るだけに、理想の音を求めるっていうのが簡単ではないと思うんですよ。打楽器っていうのは叩けば鳴るでしょみたいな事を言われがちだし、そう思っちゃうんですけど、それだけに自分の求める音っていうものを探求する、鍛錬していくっていうのがとても難しい楽器です。
北村
まあそういう意味では何の楽器でも奥深いところがあると思いますね。
竹内
そうですね。それに加えて、ティンパニっていうのはオーケストラの中ですごく大きな役割を持たされていて、クライマックスの部分で「ここがクライマックス!」っていうふうに、いわば合図のようなことをやらなくちゃいけないし、旗を振っているようなものなんですよね。「ここですよーっ!」って。かと思うと弱音で神秘的な情景をトレモロで表現するとかいう場面も求められるし。
北村
場面場面に応じないといけないし、それをまた示さないといけない。
竹内
その場所の空気を表現するとかって事もありますよね。
北村
1つ聞きたい事があるんですよ。ティンパニには確かペダルっていうのが付いていますよね。
竹内
今だいたいどこのオーケストラでも使われているのはペダルティンパニっていって、足元にペダルが付いていて、このペダルを動かす事によって音程が変わるんです。どういう事かっていうと、ティンパニは6本ないし8本くらいのネジで皮を止めてあるんです。だけど音程を変えなくちゃいけないとうい事が出てきまして、これが昔のティンパニだといちいちネジ1本1本を同じ分だけ締めていかないといけない。でも均一に締まらないじゃないですか。
北村
という事はムラができるという事ですね。
竹内
なるほど。それを均一にするわけですね。
北村
均一にしないと綺麗な音にならない。音が濁ったり、うねったりしてしまう。
竹内
そうそう、ここが難しい所で、1台について6~8ヵ所の調律ポイントがあるんですよ。
北村
それでペダルを作ったんですね。
竹内
そうです。ペダルってなにかというと、8本のネジがあるものだったら、そのネジを全部棒につなげて、それを1ヶ所にまとめたものをペダルにつなぐんです。そうするとペダルを踏む事によって8ヵ所いっぺんに皮が上下するんです。
北村
それはいつ発明されたんですか。
竹内
ベルリオーズの時代はまだペダルじゃなかったと思うので、その後なんですけど。アメリカなんですよ最初は。ドイツも同時期くらい。ペダル式ティンパニは1837年に生まれ、1850年にはだいたい今のペダルティンパニの原形になるものが出来上がったと本には書いてありますね。
北村
構造的な部分でも複雑に作ってあるという感じがしますね。
竹内
そうですね。これだけ物が大きいんで工業製品って感じですよね。各社メーカー、世界中で作られていますしね。手で回すハンドル式というのもありますね。ただこれは演奏中に音を変えたりできないですね。
北村
例えば横の人が補助するとかそういう発想はないんですか。
竹内
あ、ウィーン・フィルの場合はそうですよ。xx
北村
ウィーン・フィル!
竹内
ウィーン・フィルの楽器がおもしろくて、一般的なのはお釜が固定されてるじゃないですか。で、皮が動きますよね。でもウィーン・フィルのって皮が固定されててお釜が上下するんですよ。
北村
そんなことあるんですか。重たくないですか。合理的じゃないですよね。
竹内
そうですよね、非合理的ですよね。だから世界的には皮が動く方が一般的なんですけど、お釜が動く方が響きがいいということで。すごく伝統的な所だから。
北村
それは昔からそうなんですか。
竹内
昔から変わらないですね。で、それはハンドルで動かせるんですけど、そうすると間に合わないって言う時は補助員が出てやることがあるみたいです。
北村
それはおもしろいですね。それでは話題を変えまして。竹内さんは音楽関係以外のことで趣味とかありますか。
竹内
正直いうと頭の中すべて音楽なんですけど。
北村
ええ~?!
竹内
いやー。歩く事かなあ。
北村
ああ、ウォーキングですか。
竹内
ええウォーキング。(笑)歩く事とか体を動かす事。これがおもしろくて、いかに無駄なく効率良く動けるか。演奏に腰のフットワークが必要ですし、体が自由に動くようにしたい。ヨーロッパの人達って騎馬民族でしょ。だから移動を主体としてますよね。でも日本って腰を落ち着けてっていう文化だから、そこに僕は音楽性の違いというのを感じるんです。で、僕も日本人だからやっぱり鈍いなぁと感じることがすごくある。だからなるべくフリーに動かせるようにと。
北村
体を動かす事ということもそうですけど、例えば切手を集めるとかそういう趣味ってあります?
竹内
昔は車が大好きで、小さい頃から動くものが大好きで。車の名前全部言えたんですけど。
北村
おおそれはすごい。
竹内
最近は車も変わっちゃって分からなくなってしまいましたけど。運転は好きですね。グーッと動く時の、アクセルの踏み方とか足を伸ばすっていう仕種。これもおもしろくて、足を伸ばすって事は身体が伸びるじゃないですか…
北村
ククク…(笑)
竹内
あっ!僕の話しって結局音楽に繋がってきちゃうんですけど。(笑)
北村
ということは演奏が趣味というか、仕事でもあり生きる糧でもあると。
竹内
音楽なしでは生きられないですね。人生イコール音楽ですね。北村さんのお話も聞かせて下さい。
北村
僕入団して8年なんですけど。ちょうどドイツ留学から帰ってきて、そろそろオーケストラも考えなきゃいけないなと思ってたら仙台フィルにエキストラで呼んでいただいたりして。関西出身なんでぜんぜんわからなかったんですよ、東北に来た事なかったんで。どんな感じかなとオーケストラと接触を取りあってるところでオーディションがあるという話を聞いて、絶対に受けよう、頑張ろうと思ったんです。
竹内
その後現在までどういうふうに変わってきました?
北村
僕も最初の頃竹内さんが言ったとおり大変だったんです。まず曲を知らなかったので。今はもう分かってるからイメージがすぐ湧くんだけど、最初の頃は音がどういうふうに繋がっていくとか、自分がやってる弾き方とかいうのが。ソリストじゃないんでオーケストラでは揃えなきゃいけないですし。オーケストラというのは個人の主張も確かに持っていなければならない部分もありますけど、要するに集団というかプロット的音を出していくことが非常に大事になってくると思うんです。
竹内
ヴァイオリンとかチェロとか、同じ事を皆で弾くという人の観点というのがまずあって。で、木管は木管でハーモニーというものをすごく意識しますよね。一人一人楽譜は違うんだけれども、そこに3度とかの音程感覚っていうのがあって、それにすごく気を使っている人が多い。金管は金管で、華やかにみえるけれども、そこには1つのブラスセクションというものを求めていくという方向もあるし。そういう中で僕が一発ボーンとやる。面白いですよね。そういう意味では社会ですよね。
北村
あとはお客さんがいるわけですよ、それを受ける。そのお客さんがいかに納得して演奏を聴いていただけるかっていうことが。
竹内
そうですね。僕は共感だと思いますね。作品というものを私達はこういうふうに演奏していくっていったときに、聴き手の皆さんが、なるほどそうねすねと思う。その真ん中に作曲家の作品というのがあってね、その作品を介して大勢の人達が共感するっていう所に、僕はオーケストラの面白さや素晴らしさ、また、演奏会の素晴らしさがあるんじゃないかなぁと思うんです。
北村
そうですね。そういう意味でも我々演奏者は日々努力していかないといけないですね。これからもお互い頑張りましょう。
竹内
はい。(笑)

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