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異種楽器対談

第1回、第2回
打楽器の佐々木祥さん、チェロの山本純さん
打楽器の佐々木祥さんが、チェロの山本純さんになにやら尋ねています。

佐々木
えー、まず下世話な話題なんですが、チェロといえば楽器のケースの値段が高いって聞いたんですけど。
山本
高い高い。多分一番高い。20~40万円ぐらい。
佐々木
そんなにするの?打楽器なら買えちゃうのもありますね。
山本
前は木だったけど、重いのでいろいろな材質を研究しているようだよ。
佐々木
カーボン製のとかありますよね。
山本
うん。軽くていいんだけど値段がね……。
佐々木
象が踏んでも壊れないくらい強いとか。
山本
強くないよ、軽いから。逆に。
佐々木
バリンといっちゃうんだ。いくときは
山本
そう。頑丈にすれば重い。軽ければ弱い。結構開発が大変なんだと思う。そのわりには需要は少ないんで値段、高いんでしょう。きっと。
佐々木
なるほど。プロじゃないとそんないいケースは使いませんもんね。
山本
いや、ケース見ただけでプロとアマチュアの区別はつかないね。みんな楽器は大事にしてるから。
佐々木
それでは中身のチェロですが、音楽鑑賞教室なんかで弦楽器は、ヴァイオリンから始まって段々大きくなりますって説明してるけど、本当はそれぞれ祖先が違うという話を聞いたことがあるんですけど。
山本
ヴァイオリンとビオラとチェロは形はおんなじでしょ。大きさが違うだけ。これはヴァイオリン属って言うの。ただ、コントラバスは祖先が違う。ヴィオール属って言うの。違いを簡単に見分ける目安があって、楽器の肩がいかり肩、これがヴァイオリン属。コントラバスはなで肩でヴィオール属。今度よく見てごらん。
佐々木
なるほど。ヴィオール属であごに挟んで弾くような楽器は作られなかったんですか。
山本
うーん。はっきりはしてないようだけど、16世紀ごろできたのね、ヴァイオリン属って。
佐々木
そんなに最近なの。
山本
バロック時代の始まりは1600年くらいと言われているので、その辺りくらいからかな。
佐々木
関が原の戦いくらい
山本
(笑)そうだね。ヴィオール属に比べてヴァイオリン属は、音色が華やかだとかツヤがあるとかで。
時代のニーズにあったんでしょう。
佐々木
なんでコントラバスはヴィオール属なんだろう。あ、それはコントラバスの人に聞けばいいのか。(笑)あとね、最近古楽器って言われかたがありますよね。一般的な楽器と何が違うんですか。
山本
字の通り古い楽器。例えば有名なストラディヴァリウス、あれは古楽器なんだよ。
佐々木
えっ!そうなんですか。
山本
300年前に出来たわけでしょ。だから。でも、いまは古楽器じゃ無い。
佐々木
ん?
山本
なぞなぞみたいだよね。
佐々木
うん、わからない。
山本
例えば・・・車。古い時代物の車だけど、チェーンナップ?エンジン替えてがんがん走るようになったりする。外見は古いけど性能は最新ってことがあるでしょ。要するにそういうこと。
佐々木
フムフム。
山本
フランス革命の後だと思うけど、庶民も音楽を楽しめるようになって、ホールができて、音楽の規模も大きくなって、それまでの楽器じゃもの足りなく思われたの。それで、大きな音、強い音を出せるように改造されちゃったってわけ。
佐々木
改造って?どんな風に。
山本
「駒」っていう、弦の支えを高くして、弦もガットからスチールに替える。張りが強くなるので、胴の中の「力木(ちからぎ)」という支えを太くて長いのに替えちゃう。そうやって今の形になったんだよ。古楽器に対してこういう新性能の楽器、つまり僕たちが普段使っている楽器をモダン楽器って言ったりする。古楽器奏者はね、これをまた前の性能に戻しちゃう。あとは古い楽器のコピーね。
佐々木
新製品の古楽器っていうのがあるんだ、じゃあ。
山本
へぇ~。変な感じ。あっ、そうすると古い作曲者はその楽器を想定して書いてるわけか。
佐々木
もちろん。だから今、当時の音のスタイルに戻ってみようという考え方が出てきた。バッハ時代の楽器とベートーヴェンの時代の楽器は違うわけ。ベートーヴェンの時代の楽器とマーラーの時代の楽器も違うわけ。少しづつ変わってきているから。だから、その作曲者の生きた時代の楽器を使おうというのが、古楽器奏者の今一番考えていることだと思う。
山本
ある教則本見てたらね、「チェロっていう楽器は、オーケストラの楽器の中で一番安定した構えができる楽器である。」って書いてあったのね。「なぜなら、楽器構えたまま寝ることができる。」と。
佐々木
笑)そっか、たしかに。ヴァイオリン・・・ダメだね。コントラバス・・・そのまま倒れる。フルート、オーボエ・・・あっ、たしかに。チェロは手をかけとけば寝られますね。椅子に座ってるし。
山本
椅子といえば、仙台フィルでもチェロだけ違う椅子に座ってるでしょ。高さの問題もあるし、よく、ホールによってはお尻側が下がっている椅子だったりするじゃない。
佐々木
あーありますね。ホールによって違いますもんね。
山本
あれはね、本当に考えてほしいね。あれは演奏できないもん。体悪くする。
佐々木
寝られないし(笑)。チェロって楽器の下から、棒がにょきっと出てぐさっと床に刺して弾きますよね。あれは…。
山本
あー、エンドピンね。
佐々木
あれって昔はついてなかったんですよね。いつごろからにょきっとしてるんですか。
山本
うーん。100年ぐらいかな。マーラーの時代あたり。その時代のチェロの名手で、セルヴェっていう人がいたんだ。なんでもものすごい巨漢だったそうで、チェロを足に挟むと、おなかに楽器がつっかえて手が届かない。いつも台の上に置いて弾いてたんだけど、めんどくさいっていうんで、楽器に直接ピンを付けちゃった
佐々木
それが始まりなんですか。
山本
そう。
佐々木
えっ、うそ。
山本
って言われてる。(笑)
佐々木
最近チェロを習いたいっていう人が結構いますけど、子供の場合、ヴァイオリンなら小さい分数楽器がありますよね。
山本
ヴァイオリンはいっぱいあるよね。4分の3、2分の1、4分の1、8分の1、16分の1。32分の1っていうのもあるよね。
佐々木
チェロの場合、分数楽器ってあるんですか。小さなチェロ持って歩いてるちびっ子見たことないんですけど。
山本
チェロも今はあるの、小さいのが。ただ昔はなかったから、ヴィオラにエンドピンを付けて弾いてたって話はよく聞くね。
佐々木
純さんは、どの作曲家が一番チェロに思い入れあると思います?バッハあたりですかね。
山本
いい線いってるね。バッハの「無伴奏チェロ組曲」っていうのがあって、よくマリンバの人やトロンボーンの人とかもやっているよね。あれをチェロ音楽の「旧約聖書」っていう風に言う人がいる。。
佐々木
ということは新約があるんですか。
山本
うん。誰だと思う?
佐々木
うーん…、わかんない。
山本
ベートーヴェン!5曲のソナタがあるんだけど、チェリストにとって、もっとも大事なレパートリーの一つじゃないかな。ところで、バッハの無伴奏っていうのは、長い間単なる練習曲だと思われていた。それをコンサートで初めて取り上げたのが、カザルス。カザルスがたまたま古本屋で譜面を見つけたって話しだけどね。
佐々木
本当~?古本屋にバッハの無伴奏がころがってるなんて。
山本
これは本当。本人が書いている。
佐々木
チェロって何の木で出来ているんですか。
山本
表が松で、横と裏がカエデ。
佐々木
それって決まりなんですか。
山本
さあ(笑)。で指板、黒いところ。あれは黒檀。
佐々木
弓は。
山本
実はね、いろんな動物のお世話になっているんだよ。弓本体はヘルナンブッコっていう南米に生えている木。弓の毛は馬のしっぽ。実はもっとあって、まず象牙。
佐々木
象牙?あっ、持つとこですね。象牙って今だめなんじゃないですか。
山本
シベリアの土の中にマンモスがいっぱい埋まってるんだって!
佐々木
マンモスの牙使うの?それチェロの弓なんか作ってないで、博物館にいくべきなんじゃないですか。
山本
だってすごいいっぱい埋ってるんだってよ。
佐々木
ほんとに~?
山本
ほんとに本当。
佐々木
でも実際にマンモスの牙で作られたものってあるの。
山本
知らない。
佐々木
なあんだ。
山本
話は戻るけど、あと貝殻、鯨のヒゲ。亀なんかも・・・。それに持つとこに皮が巻いてあるでしょ。普通は牛皮とかなんだけど、僕、このあいだワニの皮巻いてもらった。
佐々木
へー、すごい色々な動植物を動員してるわけですね
山本
そうだね
佐々木
自然を大切にしないとチェロが絶滅するっていう。あ、オチがついた。地球環境を良くしないと楽器も作れなくなっちゃうんだ。
山本
でも、それってほんとにそうだよね。

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