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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.10 ファゴッティストが語るファゴットInterview

水野 一英,入交 滋

入交 滋          水野 一英

自分の音を求めリードづくりに時間をかけ、オーケストラをしっかりと支える。

2.7メートルに及ぶ長い管は広い音域を誇る

─外からはわかりにくいですが、2つに折れ曲がっているそうですね。
入交/そう、ファゴットは長い管を2つ折りにしているんです。下で折れ曲がって上に向かい、音が出るのは一番上から。長さは2 . 7メートルくらいかな。演奏には10本の指全部を使います。親指は支えるために使う楽器が多いけれど、ファゴットは親指も使って操作しているんですよ。英語ではバスーンといい、ドイツ語ではファゴットというけど、同じものです。
水野/音域は3オクターブ半あるんです。ここまで音域が広い管楽器はファゴットだけですね。
入交/音域はチェロとほとんど重なっていますね。人間の声に近いというか。
水野/歴史的にはオーボエと同じくらい古いんですよ。もともと弦楽合奏にオーボエとホルンが入って、さらに低音にファゴットが使われるようになったんですね。バスを受け持つチェロの補助だったのでしょう。
入交/ファゴットより1 オクターブ低いのが、コントラファゴット。これはもっと大きくて、管が4メートル近く。3つに折れています。重くて持ち運びができないから、オーケストラが所有する楽器を吹いています。ファゴットの重さは、5.6キロはあるかな。奏者によって用いるストラップはいろいろ。僕はお尻の下に敷いて支えるシートストラップを使っています。
水野/僕は首から下げるタイプですね。

 

リードづくりに時間とエネルギーを傾ける

─オーボエと同じダブルリードの楽器で、ご苦労も多いでしょう。
入交/リードづくりは、ファゴット吹きに一生ついてまわる苦労ですよ(笑)。まず、材料の葦を折って、根元のところをワイヤーで3カ所留め、さらに水で湿らせて空気が通るように丸く広げて、先端を切り落とします。そこからがまた大変で、楽器に取り付ける部分を、滑り止め効果を高めるために糸を巻きながら球状に仕上げていくんです。
水野/刃物で圧力をかけるとその瞬間に葦は凹む。でも復元してくる力があるから、何度も削り直します。素材によって高い音が出やすいものがあったり、低い音が出やすいものがあったりいろいろなんです。
入交/そう、高次倍音が多いのか低次倍音が多いのか、素材がもともと持っている性質があるからね。その性質を、作りながら吹いて判断していくんです。オーボエのリードと違うのは、作ってすぐ使えないこと。2 、3日息やつばを通していくと、酸化して柔らかくなって本番に使えるものになってくるんです。
水野/ある程度ぬれていないと音が出ないので、本番中も譜面台のところに水を入れた小さなプラケースを置いています。いつもリードのことが気になっていますね。
入交/机の前には、削っていない葦が何本も掛けてあるよ。
水野/練習用と本番用と、いつも備えておかないといけないし、作るのに時間は取られるし。1時間に何本組める?
入交/頑張って5本かな。
水野/僕は4本(笑)。完成品も売っているんですけどね、求める音があるので、それでは吹けないですね。かわいそうなのは高校生の生徒たち。高くてなかなか買えないからボロボロのリード使っていて。かといって、忙しい彼らに作りなさいとはいえない。練習する時間がなくなっちゃう。だから、自分の作ったリードをあげることもあります。

 

目立たない存在だけれどオケの音を下支えする

─ファゴット吹きをひと言でいうと?
水野/ファゴット吹きは、どこかとぼけて飄々としているところがあるんですよ。僕なんかは、楽器のシステムとかメカにはそう興味はなくて、「楽器より音楽が好き」という言い方がぴったりくるかもしれません。
入交/メカニックは時代とともに進化していて、キーの数も増えてきています。たとえば50年前と比べても、今の楽器の方がキーの数は多いです。求められるものが高度になって、確実に安定的に音を出すために改良されていくんですね。
水野/楽器の進化は作曲家と演奏家のせめぎ合いの中で進むんです。「次はこんなことできますか」というような要求に演奏家は懸命に応えようとするから。
入交/ベートーヴェンは、きれいにハーモニー的にファゴットを使っていますよ。
水野/チャイコフスキーの曲でも出番が多いです。そして、ショスタコーヴィチ!1番から15番までの交響曲ではいやがらせのようにソロが多い(笑)。でもそれは当時すごくうまいファゴット吹きがいたからなんです。
入交/指揮者が求めてくるものもありますけど、ファゴットは基本的に支え手としての役割を期待されていますね。
水野/気づけばそこにファゴットがいた、という感じかな。もちろん支えるよろこびはあります。それがなければ、ファゴットはやってられませんよ(笑)。


ファゴット・コントラファゴット

右がファゴット。左が1オクターブ低い音域のコントラファゴット。見た目にもかなり大きく、重さは15キロほどある。どちらもニスの塗られた木質が美しい。

リード

左がファゴット、右がコントラファゴットのリード。根元は丸みをおび、糸をクロスさせながら巻いて仕上げてある。

みずの かずひで 仙台フィルファゴット首席奏者。東京藝術大学卒業。1990年入団。

にゅうこう しげる 仙台フィルファゴット奏者ハンブルグ音楽院中退。ハンブルグ交響楽団を経て1997年入団。

第320回定期演奏会(2018年7月13日,14日)プログラムより

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