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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.9 コントラバシストが語るコントラバスInterview

助川龍,名和俊

名和 俊          助川 龍

アンサンブルを支え、音楽の風景、音のイメージを変えていく。

コントラバスの先祖はギターの仲間

─大きくてもヴァイオリンの仲間なんでしょうか。
助川/それが、僕たちだけ「お父さんが違う~」って感じ(笑)。
名和/ヴァイオリンとは違って、ご先祖はヴィオール属(ヴィオラ・ダ・ガンバ)というギターの仲間なんです。
助川/調弦も、他の弦楽器は5度調弦なのに、コントラバスは4度調弦なんです。ものすごく個体差があって、形もなで肩のガンバ型もあれば、肩の張ったヴァイオリン型もあるし、裏板も真っ直ぐのものがあったり、カーブがついていたり。ヘッドの形も違うし、面白い楽器なんですよ。
名和/土くさい楽器ですよね。分数楽器はあることはあるんですが、僕らは普通4分の3を使います。
助川/弦も太くて、一番細いのがスパゲッティぐらい。次がゆでたスパゲッティくらい。その次は稲庭うどんくらい(笑)。
名和/5弦目なんてペンネぐらいある(笑)。
助川/でも弓はヴァイオリンより短い。
名和/楽器が大きくなるほど、弓は短くなるんです。大きさが数メートルの超デカい「オクトバス」というコントラバスもあるんですよ。ベルリオーズが考案したらしくて博物館に入っているんですが。
助川/コントラバスのこと、中国語で何と言うと思います?「妖怪大提琴(ようかいだいていきん)」(大笑)。もののけですよ(笑)。
名和/奏者も個性的でユニークな方が多いような(笑)。

 

コントラバスに光を当てた最初の作曲家、ベートーヴェン

─先祖の違うコントラバスがなぜオーケストラに入ったのでしょう?
助川/バロックの時代、通奏低音を受け持つ楽器は何種類かあったんですけど、作曲家が使うかどうかで生き残りが違ったのでしょうね。モーツァルトの最後の交響曲「ジュピター」で、初めてコントラバスがチェロから分かれて独立するんですよ。終楽章の大フーガのところで。
名和/コントラバスは、チェロよりちょうど1オクターブ低いんです。同じ音符を弾くと1オクターブ低い音が出るんですね。
助川/それまではチェロと同じパート譜を弾いていたんですが、「ジュピター」では2割くらい独立しています。で、コントラバスに最初に光を当てた作曲家といえば…
名和/ベートーヴェンなんです!
助川/交響曲3番でコントラバスが初めて独立するんですが、これは奏者にとっては事件といっていいくらいのことなんです。
名和/その頃、ベートーヴェンは若いのにすでに難聴が始まっていたんですよね。
助川/何といっても3番の「エロイカ」は、コントラバス奏者が熱く語る曲で、2楽章の葬送行進曲のところにコントラバスが出てくるんです。
名和/「ソラシド~ソラシド~」という装飾音符を弾きます。チェロは「ドー」だけです!
助川/そうそう。「ソラシド~ドレミ~ミファソ~!」(2人で歌う)。これを、引っ張るようにやる指揮者もいれば、オンザビートでやる方もいて、なかなか難しい。
名和/弾くとき、ものすごく緊張するんですよ。地底から響き上がるような音。
助川/人間の苦しみ、苦悩の表現をコントラバスに託したんでしょう。当時、コントラバスの名手だったD・ドラゴネッティという人がいて、ベートーヴェンはこの人のために曲を作ったというのもあると思います。名曲の陰に名手あり、なんです。

 

少ない出番でアンサンブルの色を変える

─ソロで弾くことはあまりないのでしょうか?
助川/基本はアンサンブル楽器です。
名和/たまにソロで出てくる曲があって、マーラーの1番の交響曲「巨人」の3楽章冒頭のソロが最も有名です。
助川/長い曲でも僕らは休んでいることが多くて、小節の数を数えながら出番を待っているんですよ。ときどき数え違ったりするけどね(笑)。若いときは、どうしてブラームスはコントラバスのソナタを書いてくれなかったんだろう、なんて思っていました。今は考えが変わって、交響曲をソナタのように大切に弾いています。
名和/長い休みのあとに、「ボン」と響かせることや「ブーン」と奏でることは快感ですね。
助川/アンサンブルの一番低い音を僕らが担っていて、その上にヴァイオリンの音が乗るわけですが、「ド」の音が「ド♯」となっただけで、色が変わる、風景が変わる。例えば、お魚料理も下のお皿が違うと、別の料理に見えたりするでしょう?それと同じ。指揮者からの注文を先回りしてやってうまく音楽が運ぶとき、コントラバスやっていてよかったって思うんです。


コントラバス

名和さんが弾くコントラバスは200年ほど前のイタリア製。奏者は、基本的に仙台フィルが所有する楽器を使用し、そのほかに自分の楽器を1台持っている。昨年1年間のドイツ留学の際には、自分の楽器を持参した。

アイーダトランペット

ヘッドのデザインも1台1台違っている。弦を巻くつまみの形も微妙に異なり、丸かったりハート型だったり、楽器制作の職人たちが腕を競ったのだろう。

すけがわ りゅう 仙台フィル コントラバスソロ首席奏者。国立音楽大学を経て桐朋学園大学研究科終了。2014年入団。

なわ しゅん 仙台フィル コントラバス副首席奏者。京都市立芸術大学卒業。2015年入団。入団後、ベルリンに留学。

第319回定期演奏会(2018年6月15日,16日)プログラムより

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