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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.7 トロンボニストが語るトロンボーンInterview

菊池公佑、山田守

山田 守            菊池 公佑

天から聴こえる神様の声も、地獄から響く悪魔の声も、吹き分ける。

神様の楽器としての歴史を歩んできたトロンボーン

─かなり歴史のある楽器のようですね。
菊池/生まれたのは15世紀。その頃は、「サックバット」と呼ばれていて、ベル(先端)が今のように広がっていなかったんですよ。
山田/当初から2つのパイプを組み合わせて、スライドさせて音程をとっていました。楽器の形が変わっていないんです。
菊池/一方、トランペットは、倍音は出せたけどドレミファソラシドのような音階はまだ吹けなかった。
山田/トロンボーンはメロディを奏でることができたから、教会や宗教的な場でよく使われました。ヨーロッパの教会に行くと古びたトロンボーンが置いてあったりする。パイプオルガンの代わりだったんでしょうね。
菊池/トロンボーンは神様の楽器というイメージが強かったから、世俗的な曲には使われなかったんです。シンフォニーに初めて使ったのはベートーヴェンで、交響曲第5番「運命」に。あとは6番、9番にも。
山田/モーツァルトはレクイエム、ミサ曲には使ったけど、シンフォニーには使わなかった。ブラームスはシンフォニー4曲全てに登場させていますね。1番では、4楽章のコラールの部分、神様が降りてくるところに使っていますよ。
菊池/神様の声、天使の声なんです。でも、一方で悪魔の声にもなる(笑)。
山田/ベルリオーズは、地獄から聞こえてくる神の声に使っている(笑)。楽器が進化して、いろんなことができるようになったのもあるでしょうね。
菊池/産業革命以降、技術が発達してバルブをつけたバルブトロンボーンが登場すると、プッチーニやロッシーニやヴェルディなどのイタリアオペラでも使われるようになるんです。
山田/オペラは劇場のピットで演奏するから、スライドよりバルブの方が場所をとらなくてよかったのかもしれません。

いくつもの要素を組み合わせて、ひとつの音を出す

─スライドを動かして音程を変えているんですか?
山田/トロンボーンのスライドには7つのポジションがあるんです。手前から第1ポジション、第2ポジションと…でも、ヴァイオリンと同じで印がついているわけじゃなくて、感覚で覚えなくちゃならない。それぞれのポジションでいくつもの音が出せるんですが、息の出し方や唇の振動で変えているんですよ。
菊池/自分の頭の中でイメージする音を、まず唇を振動させてマウスピースで出すんです。これが正しくないとスライドで微調整してもうまくいかない。高い音の場合は口をすぼめてくんですが、フォルテだと高くなりがちだし、ピアノだと低くなりがち。なかなか難しいんですよ。この大変さ、わかってもらえます?(笑)。
山田/ひとつの音を出すために、いろんな要素があるんです。たぶん説明しても書ききれないと思いますよ(笑)。
菊池/マウスピース選びも重要で、一つのメーカーが20~30種類は出しているから、数百の中から自分に合ったものを見つけていく必要があるんです
山田/金、銀、プラチナ…かけられているメッキの種類によっても微妙に音色が違ってくるしね。

チームワークのよさでこなすアンサンブルの仕事

─オーケストラの中ではどういう役割を担っていますか?
菊池/中低音の音域なので、音に厚みや深みを加えるのが役目です。3本1組で動くことが多いですから、ハーモニーをつくるのがすごく得意。
山田/他の金管に比べると、ソロが少ない楽器とも言えますね。
菊池/ハーモニーをつくるのでチームワークがよくないと。あとは、直管楽器といってベルが前に出ているから、ダイナミックな表現にも使われます。
山田/だから、ごまかせない。小さい音も大きい音も、まっすぐ伝わるから。
菊池/でも、出番は少ないんです。唇に負担がかかるから始終吹けないんですよ。「運命」だと、ヴァイオリンの譜面が20ページあるとすると僕らは2ページ。
山田/「第九」も3ページくらいだよね。
菊池/小節を数えるのも仕事のうちですが、まれに出るところを間違えることもあります(笑)。
山田/3人でうまくカバーし合って吹いていますね。
菊池/ずっと休んでから吹く、それも高い音を出す、というのは金管奏者の不安要素のひとつだけれど、今回の定期で演奏する「ボレロ」の中にも、10分近く休んでからいきなり高い音を出すソロがある。すごい緊張感。
山田/そこからさらに高い音に上がっていくんです。菊池さんの隣に座っていて、いつもうまくいくように、と祈るような気持ちです(笑)。いつもうまくいっていますけど。


トロンボーン

左から、バス・トロンボーン、テナー・トロンボーン、アルト・トロンボーン

きくち こうすけ 仙台フィル トロンボーン首席奏者東京芸術大学卒業。2003年入団。

やまだ まもる 仙台フィル バス・トロンボーン奏者。 東京音楽大学卒業。1989年入団。入団後、ベルリン芸術大学に1年留学。

第317回定期演奏会(2018年3月16日,17日)プログラムより

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