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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.6 フルーティストが語るフルートInterview

戸田敦、芦澤曉男

戸田 敦            芦澤 曉男

リードがなくて横構え。オーケストラの中では異彩を放つフルートの難しさ、奥深さ。

19世紀前半、今日のフルートの基礎ができる

─フルートはオーケストラの中では唯一、横に構える管楽器ですね。
芦澤/もともとは、「フラウト・トラヴェルソ」といったんですよ。
戸田/「フラウト」はリコーダーのこと。「トラヴェルソ」は横に構えるという意味なんです。
芦澤/持ってきましたよ、今日は(笑)。楽器のコレクションを。(つぎつぎケースから取り出す)。こんなふうにリコーダーのようなシンプルな木管に、少しずつキーを足して発展していったんですね。
戸田/で、だんだんキーを足していくだけではどうにもならなくなって、ドイツのテオバルト・ベームという人が機能をガラッと整理して、現代のフルートに近いものをつくったんです。
芦澤/1840年代にね。その前のフルートは今よりぼやっとした音ですよ。(吹く)ね、柔らかい音でしょ。ベーム式が出たときは反対する人たちがいたけど、今はすっかり前のスタイルはすたれちゃった。
戸田/ベートーヴェンの時代は、ベーム式の前だから高い音が出せなくて、フルートだけ不自然に1オクターブ下がったりするんですよね。そのあとは、フルートに相当無理を強いる曲が作曲されるようになっていったけど(笑)。
芦澤/活躍する曲がたくさんあって、恵まれている楽器だと思っています。オーケストラはもちろん、室内楽でもソロでもいい。ポピュラーでもさまになるし、スーパーに行くとBGMがフルートの曲だったりして(笑)。メロディーを吹いているときなんかは、自分で音を出していても気持ちがいい。
戸田/それはすばらしい(笑)。オーケストラでは、メロディーがいろんな楽器にバトンタッチされて最後にフルートに来たりするので、失敗したらぶち壊し。入団した頃は、すごく緊張感がありました。

自分の音楽にあった楽器を選びとる

─木管楽器だけれど、金属でつくられていますね。
戸田/金、銀、プラチナ…いろいろあります。僕のは14金に銅が混じっているので、ちょっと赤味がかっている。芦澤さんのは銀なので白っぽいですね。金属によって音色も変わるんですよ。
芦澤/両方ともアメリカのパウエル社製。同じメーカーでも時代によって変わっていきますね。以前はヘインズという会社のフルートを使っていたんですが、リハーサルのたびに外山先生に叱られてばかり。泣く泣くパウエルに替えたらリハで注意されることもなくなりました。
戸田/世界的なフルーティストのJ=P・ランパルは一生ヘインズを使ったんですよね。僕らはみんなランパルにあこがれていた世代だから。ただ、音程が自由過ぎて(笑)。でも、音程が安定すると音が無機質になってしまう。ゆらぎみたいなのがなくなってしまうんです。
芦澤/結局フルートは楽器を変えるしかないから、楽器病になってしまう(笑)。
戸田/低い音域が出しやすい楽器にすると、今度は高い方が細くなるしね。
芦澤/フルートは吸った息をずいぶん捨てているんですよね。でもそのフルートそのものの音以外の部分がけっこう大事です。それが味わいになっている。
戸田/そばで聴くとシャリシャリ、シュワシュワする音がするんです。最近の録音では、それを捨てちゃうのですごく残念。ここが音色の特徴だったり、表情だったり、すごく音楽に影響しているのにね。

どこまでもついてまわる唇と歌口で音を出すことの難しさ

─吹き口(歌口)にリードがないのも大きな特徴ですね。
芦澤/一番いいところですよ。木管の人たちはみんなリードで悩んでいる。
戸田/会場に入ると僕らはすぐに音を出すけど、みんなリード削っていますからね。でも、調子悪いときはすべて自分のせい。はっきりしています(笑)。
芦澤/瓶に息を吹き込むとボーッと音が出るのと同じ原理ですが、歌口と唇だけで音を出しているので、やっているうちにのどこを当てているのかがわからなくなっちゃう。
戸田/それ、すごくよくわかります。必ずしも唇の中心を当てているわけではないんですよね。少し右側を当てて調子がいいなと思っていても、吹いている間に右に寄りすぎてしまうのか調子悪くなるんです。もうこっちに当てたり、あっちに当てたり、試行錯誤…ものすごく微妙です。今日は不調だなあと感じて、鏡見て写真撮っても調子いいときと同じ。唇と歯の位置が日によって何ミクロンか変わるでしょうしね。
芦澤/姿勢も影響しているなと思う。最近、背筋伸ばすように心がけたら、なかなか調子がいい(笑)。
戸田/椅子の影響もありますね。僕は座面が後ろに傾いていると息が入らない。ステージの椅子を直してもらうこともあるんです。あとは、フルートって3つに分解できるんだけど、組み立てるときの角度もある。一番下をちょっと外向きにするとか。
芦澤/ああ、気になり出すとキリのない角度病ね(笑)。あと、ピッコロやるとそのあと不調になるんだよね。
戸田/そう、息の量が違うからでしょうか。ピッコロの上手な人は「フルートと同じように吹く」と言うけど、なかなかそうはいきません。以前は「今日は誰が吹く?」って顔を見合わせていたけど、今は宮嵜さんが吹いてくれるからよかったですねえ(笑)。


フルート

左から、戸田さん、芦澤さん愛用のパウエル社製フルート。芦澤さんのフルートは少し長く、半音低い音まで出る。右端はピッコロ。ピッコロはフルートより1オクターブ高い音域。

フルート

芦澤コレクション。手前2本が、フルートの古楽器。奥2本はリコーダー。同族の楽器であることが見てとれる。

とだ あつし 仙台フィルフルート首席奏者。武蔵野音楽大学を卒業後、パリ・エコール・ノルマル音楽院に留学。2000年に入団。

あしざわ あきお 仙台フィルフルート副首席奏者。東京音楽大学を卒業。1990年に入団。

第316回定期演奏会(2018年2月16日,17日)プログラムより

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