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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.5 ホルニストが語るホルンInterview

須田一之、溝根伸吾

溝根 伸吾            須田 一之

難しい楽譜の移調をこなしながら、多彩な音色を吹き分ける。

生活の中で使われていた角笛から発展

─ホルンは、もともとは角笛から始まっているそうですね。
須田/楽器というより、最初は伝達手段に使われていたんです。音やリズムを決めておいて、遠くにいる人に合図する。アルペンホルンは、深い谷の中の伝達手段でした。
溝根/郵便屋さんが使ってたポストホルンというのもあるし。けたたましい音を出す狩り用のハンティングホルンというのもあります。日本なら法螺貝が近いかな。
須田/狩りのとき、先頭の人たちが後ろ向きにホルンを背負って仲間に合図を送ったんです。だから、現代のホルンもベルは後ろ向き。お客様は反響板に当たった音を聴いています。ドイツに留学したとき、先生が狩りの免許も持っていて連れていってもらったことがあるんですが、食事の時間になれば音楽的なフレーズも吹く。生活の中で生まれて使われてきた楽器ですよ。
溝根/金管楽器は、楽器の性格によってイメージが違いますよね。トロンボーンは教会で使われることが多かったし、トランペットは華やかな音なので王様の戴冠式で使われたりしました。
須田/ホルンは民衆の楽器ですね。
溝根/金管楽器に共通しているのは、バズィングといって唇をブルブルと高速で震わせて音を出していること。発音体が自分の唇で、これで音程も変えてしまうんです。だから、金管楽器はただその唇の音を大きくしているだけで楽器学的には楽器じゃない、という面白い説があるくらいです(笑)。
須田/現代のホルンはバルブで音程を変えるけど、バルブのないナチュラルホルンでは、ストップ奏法といってベルの中に入れている右手のふさぎ方を微調整することでも、ドレミファソラシドが演奏できます。
溝根/ハイドンやモーツァルトの時代は、そうやって吹いてたんですね。

楽譜の音を移調して演奏する難しさ

─古典派の時代のホルンは、現代のホルンとは違うんですね。
溝根/当時のナチュラルホルンは管をくるっと巻いただけのような楽器で、いつもジャラジャラ何本も管を持ち歩いて、調性が変わるごとに付け替えたんです。この管をはめると◯調という具合に。
須田/現代の楽器はフルダブルホルンといって、F管(えふかん・ヘ長調)とB♭管(べーかん・変ロ長調)の2つの管を1つの楽器におさめているのが一般的です。F管が基本なので、僕らの基本は「ファソラシ♭ドレミファ」。
溝根/だからナチュラルホルンを前提に作曲されているモーツァルトとかベートーヴェンの曲をやるときは、いつも頭の中で移調しなくちゃいけない。
須田/たとえば、ピアノの楽譜を見ながらアンサンブルやろうよ、といってもホルンは楽譜そのままでは吹けないんです。頭の中で調を読み替えないとね。構造的にも複雑だし、管楽器の中では音域が一番広いし、常にリスクを想定して吹いている感じです。
溝根/仙台フィルのホルン奏者は6人いて、高音域を担当する1・3番奏者(上吹き)と低音域を担当する2・4番奏者(下吹き)に分かれています。僕は下吹きですが、ソロは上吹きに集中するので、首席奏者の須田さんのプレッシャーはかなりのものだと思いますよ。下吹きのパートにも時折ソロが登場するので、それはそれで緊張しますが(笑)。
須田/もし間違ったら?知らないふり(笑)。でも、こういう難しさが、ホルンの魅力なのかもしれないですね。

ホルン奏者には家族のような仲間意識がある

─ホルンのくぐもったような音が何とも魅力的です。
溝根/一方で金属的な音も出せる。ブラームスはノスタルジックなイメージを出すのにホルンを使うことがありますね。ホルンの音色が曲に与える影響力って大きいと思いますよ。正直、オケの音色はホルンが決めると思ってやってますから(笑)。
須田/登場する曲も多いです。古典派もあなどれなくてベートーヴェンは9つの交響曲で、もれなく使ってます。しかも、ほとんど出ずっぱり。休みがない(笑)。
溝根/だから管の中に水がたまってしまうので、ときどき10カ所ある抜差管をはずして、ステージの上でぐるぐる回して水抜きするんです。
須田/大人数で吹くのもホルンが一番多いかな。マーラー、R.シュトラウス、ストラヴィンスキーの大きい編成の曲では8人で吹きます。マーラーの交響曲第1番「巨人」では、「立て」という指示と、音を届けるためにベルの部分を上げて吹く「ベルアップ」という指示もあるんです。視覚的な効果もあって、お客様はその雄叫びに感動するんですね。
溝根/アンサンブルを組むことも多いですね。木管と組んだり、ホルンだけで吹いたり。だから、花形ではないけれど仲間意識が強いんです。ドイツに留学したとき先生がいってましたよ。「全世界のホルン吹きは家族のようなものだ」って。僕も電車の中でホルンのケース持ってる人見かけると、すごく親近感覚えるんです。


ホルン

溝根さん所有のドイツ・アレキサンダー社製、フルダブルホルン。F管約3.7m、B♭管約2.8mの管が一つにおさまっている。

すだ かずゆき 仙台フィルホルン首席奏者。武蔵野音楽大学卒業後、ドイツ・デトモルト国立音楽大学を首席で卒業。1997年入団。

みぞね しんご 仙台フィルホルン奏者。東京藝術大学大学院卒業。2013年入団。2015年から半年間、ドイツ・ミュンヘンに留学。

第315回定期演奏会(2018年1月19日,20日)プログラムより

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