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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.4 ヴィオリストが語るヴィオラInterview

井野邉大輔、梅田昌子

 井野邉 大輔        梅田 昌子

あるときはメロディを、あるときはベースを、俳優のように、声色を演じ分ける楽器。

ヴァイオリンとは異なる箱を鳴らす感覚

─お二人とも最初ヴァイオリンを学び、ヴィオラに転向なさったんですね。
梅田/ヴァイオリンで音楽高校に入学したら、すぐに先生に勧められたんです。体が大きかったからかな。性格もあったと思うの。のんびりしてて、そう目立ちたがりじゃないので(笑)。
井野邉/僕も音楽高校でヴァイオリン専攻だったけど、結局、ヴィオラがやりたくて音大4年のとき別の大学に入り直しました。そっちにつきたい先生がいたから。青年ならではの潔癖さですね(笑)。
梅田/私は、ヴィオラはすぐ弾けるようになるだろうと思っていたの。でも、取り組んでみるとボーイングもビブラートのかけ方もヴァイオリンとは違う。まったく別の楽器なんだ、と気づくまでに2年くらいかかりました。
井野邉/僕は4、5年かかったかも。弾けてたつもりだったけど、録音とって客観的に聴くとヴィオラの音がしない。オーケストラに入って、実践の中で学んでいきました。でも、技術はヴァイオリンのメソッドで身につける必要があるんですよね。
梅田/ヴィオラは鳴らすと体に響くのよね。フローリングの上だと足までびりびり響いてくるような感じ。最初の頃は力を入れて弾いていたけれど、脱力ができてくると楽器の張力が自分に返ってくるのがわかるの。圧力かけてる腕に、弦の方が圧力を返してくる。それを捉えることができたときが、いちばん楽器を鳴らせている感じがします。
井野邉/ヴァイオリンにはそのような感覚は少ないですね。抵抗の大きなヴィオラを扱うことは、自身の身体の使い方を含めて頭で整理しながら弾く勉強になります。一方で教える立場になってみると、ヴァイオリンやってる子の中に「ヴィオラ向きだ」と感じる子もいるね。無意識に箱(楽器本体)を鳴らそうとするんです。
梅田/そうそう、単に弓で弦をこする音じゃない音を出す子がね。

楽器と弓が新たな表現を引き出してくれる

─ヴァイオリンより5センチほど大きいそうですね。
梅田/ヴィオラのサイズは40~42、3センチくらい。ヴァイオリンのように分数楽器があるわけではないけど、だからと言って「これ!」と決まったサイズもないんです。でも大きいと体に無理がかかるので、自分の体に合う大きさであることが大切。演奏中に弦が切れると他の人の楽器がまわってくるけど、体の大きな人のだと「体重が足りない!」と感じます(笑)。
井野邉/ヴィオラもヴァイオリンを製作する人がつくりますが、不思議なもので、いい楽器ほど手元では音が聴こえにくいのに、客席の遠くまでよく響くんですね。
梅田/私のは370年ほど前のもの。でも古いものがすべていいとは限りません。地力尽きてるものもあるから。
井野邉/元禄時代くらい!?(笑)。僕が使っているのは自分より2歳若い47歳。これは7、8台目かな。楽器は自分の能力に合わせてレベルアップしたものに買い替えて行くのがいいと思っています。楽器から教えられることってたくさんあるので。
梅田/弓もヴァイオリンの弓より重くて短くて毛の量も多いんです。いい弓はちゃんと扱わないと、弓に叱られます。「あ、いまの私悪かったね」って謝るときもあります(笑)。
井野邉/ラフにコントロールすると、弾き返されたりね。楽器に教えられて、表現の引き出しが増えていくんですね。
梅田/楽器が自分が弾いた以上に歌ってくれて、「今のいい!」と感じながら新しい発見をすることもあります。

細やかなプログラミングで音の質を変える

─オーケストラの中でのヴィオラの役割は?
井野邉/オールラウンドプレーヤー。攻めも守りもやるミッドフィルダー。ヴァイオリンのようにメロディーも歌うし、チェロに代わってベースを担うこともあるし、内声部もつくるんです。
梅田/まわりの音を聴いていつも気を使っているし、いろんな役割も担っているから、役者のようじゃないとやれない(笑)。休符一つはさんで、性格を変えるんだものね。
井野邉/ときには休符なしで違う音出さなきゃなくて、直前の拍で頭を切り替えてる(笑)。俳優さんが台本読んで、役を演じ分けるのと似ています。
梅田/ヴィオラはヴァイオリンより音程が5度低いんだけれど、箱の大きさと音域が見合ってなくて、鳴らすツボが狭いらしいのね。そこにも難しさがあるんでしょうね。
井野邉/だから、いつも頭を働かせてますね。たとえば、弓を弾いて一つの音を出して弓が余ったとするじゃないですか。そのときヴァイオリンなら先端まで弾き続けて拍の中に納めても、音楽になっちゃう。でもヴィオラは大きくて反応が鈍いから無理。だから、あらかじめ弓の始める場所と返す場所を決めてプログラミングしておくんです。頭で弾く楽器です。
梅田/そこに、ヴィオラ弾きのプライドがあるんです(笑)。


ヴィオラ

梅田さんのヴィオラは、トノーニ。自分の手に合うようネック部分を削った。湿気対策のために、半年は除湿機を回し続けて管理しているという。井野邉さんの楽器は、ステファノ・コニア。

いのべ だいすけ 仙台フィルヴィオラソロ首席奏者。桐朋学園大学でヴァイオリン専攻後、洗足学園大学に編入しヴィオラに転向。NHK交響楽団を経て、2014年に入団。

うめだ まさこ 仙台フィルヴィオラ奏者。高校1年でヴァイオリンからヴィオラに転向。東京藝術大学、東京藝術大学大学院を卒業し、1987年に入団。

第314回定期演奏会(2017年11月17日,18日)プログラムより

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