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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.3 クラリネッティストが語るクラリネットInterview

ダビット・ヤジンスキー、鈴木雄太

   鈴木 雄大         ダビット・ヤジンスキー

限りなく小さな音も、まろやかで豊かな音も、きらびやかで大きな音も出せる。

最初はマウスピースで音を出す練習から

─クラリネットは初心者でもたやすく音を出せる楽器ですか?
ダビット/けっこう簡単に鳴りますよ。クラリネットは5つの部位に分解できるんだけど、僕はポーランドで、はじめは吹き口のマウスピースとその下のバレル(樽)でエクササイズしたね。
鈴木/僕もです。中学の部活で始めたんですが、最初はバレルまでを使って音を出す練習。楽器を持てたのは2カ月後でした。
ダビット/クラリネットはシングルリード。ダブルリードのオーボエのように自分でリードを作るのではなくて、大抵みんな仕上がっているものを買って吹いています。
鈴木/僕は買ったのをヤスリで削って調整し、吹きやすいようにしてますね。
ダビット/僕の楽器は15歳のときポーランドで買ったもので、しかもユーズド、古い木が醸し出す特有の響きが好きだからです。フランスのビュッフェ・クランポン社製のもので世界中の奏者の90パーセントが使っています。何度も修理しながら、18年間、大事に大事にしてきました。日本はヨーロッパとは気候が違い、台風が近づいた時にケースを開けたら水がたまっていてびっくり。
鈴木/冬の乾燥も恐いですよね。寒いところに置いておいて、いきなり息を入れたら木が割れてしまう。だから僕は吹く前、ケースをしばらく開けたままにしておきますよ。
ダビット/吹くときは、マウスピースの上部にパッチという小さなクッションを貼り付け、それに前歯をあててくわえています。厚さは0.3~0.8ミリ。僕は0.4ミリだけど、少し変わっただけで吹きにくい。
鈴木/僕も。0.36とか、0.56とか、そんな微妙な厚みのものもあるくらいだから。

ステージで数種類の楽器を吹き分ける

─クラリネットは仲間が多い楽器だそうですね。
ダビット/基本は、B(べー)管(変ロ調)とA(アー)管(イ調)。Es(エス)管(変ホ調)もわりと使いますね。あとはバスクラリネット。他にC(ツェー)管(ハ調)、D(デー)管(ニ調)、そしてバセットホルン(へ調)というものがあります。仙台フィルでは、僕がB管とA管を担当して、鈴木さんはほかにバスクラリネット、下路さんはEs管も吹いてます。B管とA管は、見た目はほぼ同じ。移調楽器といって、同じ「ド」の指づかいでそれぞれ「 シ♭」と「ラ」が鳴るんです。わずか半音の差ですね。
鈴木/B管とA管は曲によって使い分けるんです。♯がいっぱいだとB管で吹くのは難しい。クラリネットの譜面には必ず指示が書いてあるんですよ。「in B」とか「in A」とか。1楽章と2楽章で使い分けることも、よくあります。
ダビット/ときどき2小節だけ変わるということもある(笑)。
鈴木/曲の中で持ち替えて(笑)。
ダビット/そのとき、僕はマウスピースとバレルをいっしょにはずすんだけど、下路さんはマウスピースだけ交換してるね。
鈴木/僕もですね。たまにリードがはずれそうになったりしてあわてる(笑)。
ダビット/楽章と楽章の間も、休まず続ける指揮者もあるしね。1秒くらいあけて、と指揮者と相談して決めておいても、なかなかうまくいかないこともあるんです(笑)。客席からは見えないと思うけど、必ず何本かのクラリネットをスタンドに置いてるんですよ。
鈴木/お掃除用の布、スワブも必需品ですね。
ダビット/僕は、トイレットペーパー使ってるの。これ、触ってみて、ゴワゴワ音がしなくていいんだ。ヨーロッパの特別なメーカーのなんだけど。あっ、これ書いちゃだめですよ(笑)。

広い音域で、異なる音色が出るのが魅力

─どこにクラリネットの魅力を感じますか?
鈴木/音域が広いですね。最低音は真ん中のドより7度下のレで、そこから4オクターブくらい上までは出ます。バスクラリネットはさらに1オクターブと3度下まで。これは管の内径が吹口から下までほぼ円筒状でできている「閉管」という構造のおかげなんですよ。音域によって音色の性格が違うのも魅力です。
ダビット/まろやかで温かい音が出れば、きらびやかで叫んでるような音も出る。
鈴木/音域は4つに分けて呼び名があるんです。下から、「シャリュモー」「ブリッジ」「クラリオン」「アルティッシュモ」。クラリネットは構造上出ない音があるんですよ。リコーダーだと、後ろ側の穴を半分開けると1オクターブ高い音が出せるんですが、クラリネットだと1オクターブと5度上の音が出るため、間の音がいくつか抜けてしまう。そこで管の上部のあまり響かない部分に無理やり穴を開け、橋渡しのようにして出せるよう改良したんです。だから「ブリッジ」というんですね。説明するのは難しいな。吹くのは簡単なんだけど(笑)。
ダビット/古い時代から何度も改良されて、いまのクラリネットのようなキーシステムが完成したのは20世紀始めになってから。自在にピアニッシモが出せるし、自由がきいて何でもできる。そこが好き。フランスの作曲家O・メシアンはその特徴に着目して、その魅力を多いに引き出せる曲『世の終わりの為の四重奏曲』の3楽章「鳥たちの深淵」を書いています。
鈴木/僕は、人がしゃべるのと同じように、歌うように吹ける、と感じますね。


クラリネット

左がバスクラリネット。右のB管クラリネットは、ダビットさんがポーランドで求め、18年間、大切に使い込んできた。

だびっと やじんすきー 仙台フィル首席クラリネット奏者。チューリッヒ芸術大学卒業。2012年入団。ポーランド出身。

すずき ゆうた 仙台フィルクラリネット奏者。尚美学園大学卒業。2017年10月入団。茨城県出身。

第313回定期演奏会(2017年10月27日,28日)プログラムより

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