TOP> 楽団員インタビュー> 楽団プロフィール> 仙台フィルについて> 楽器談義

楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.2 オーボイストが語るオーボエInterview

西沢澄博  木立至

西沢 澄博            木立 至

リードづくりは音づくり。こだわりの音を求めて、今日も葦を削る。

オーボエは演奏者の音色の個性を映し出しやすい楽器

─オーボエというと真っ先に思い浮かべるのは、開演のときのチューニングの音です。
西沢/なぜオーボエなんだろう、こっちが聞きたいくらい(笑)。
木立/いちばん音程が動かせない楽器だからという人もいれば、オーボエのリードが不安定で他の楽器に合わせられないから他の楽器が合わせている、という人もいるし。
西沢/古い楽器だからというのもあるかも。どの時代の曲をやっても、たいていオーボエは入っていますもんね。
木立/もともとオーボエはトルコの軍楽隊の楽器が発展したものといわれているけど(諸説あり)、ダブルリード(*1)の楽器は世界中にあるんだよね。英国のバグパイプ、日本のひちりき…。
西沢/構造としては原始的な楽器だと思います。指づかいも決して効率的とは言えないけど、他の楽器より音色の個性は出しやすいかな。
木立/いまはインターネットやCDがあるから瞬時に情報が共有できるけど、僕の学生の頃はどのオーケストラの誰かがわかるほど違いがあったよね。
西沢/管楽器の中では、倍音が多いんです。そこにリードが加わるから、物理的に組み合わせの要素が多くて、音色の差が出やすいんでしょうね。
木立/選択肢がいろいろあるから、全体として演奏者による違いが大きくなるということだね。

音づくりのために、自作のリードにこだわる

─リードづくりには練習以上の時間をかける、と聞きました。
木立/練習時間とは別に時間を確保します。僕は、朝つくりますね。
西沢/僕は夜かな。お酒飲みながらじゃないですよ(笑)。
木立/飲みながらやったら、絶対失敗するよ(笑)。
西沢/奏者によってこだわりはいろいろ。長さも幅も、2枚のリードの間の開き具合をどのぐらいにするかも違うんですよ。材料の葦を持ってきたんだけど…(取り出す)。生産は南仏が多いかな。これは1本の径が10.5から11ミリ。
木立/僕は9.5〜10ミリを使ってます。これ、ずいぶんきれいな材料だね。昔は外国から輸入された材料の箱を開けると、虫が飛び出してきたりしてさ(笑)。
西沢/いつもはもっと曲がったりねじれてたりするのが多くて、そこから使えるところを選ぶんです。1本をナイフで割って、内側に専用のカンナをかけて薄くしていって、それを半分に折ってボート型にくり抜いて、根本に糸を巻きつけてできあがり。糸は、僕はボタンの穴かがり糸を使ってますね。
木立/僕はミシン糸。手芸屋さんで買ってますよ。ナイロンの糸か、絹糸かによっても音色が違ってくるんですね。
西沢/今日はリードの厚みを測る器械も持ってきてみたんだけど、測ってみましょうか?リードの吹口のところ、2枚のうちの1枚の厚みが測れるんですよ。ええと…0.13ミリだ。
木立/僕のリードも測ってみて。…0.12ミリか。コピー用紙より少し厚いくらいだね。西沢君と厚みが違うのは、同じオーボエ奏者でもパートが異なるから。僕はセカンドパート担当で周りのタイミングや音程に合わせて吹くことが重要なので、対応するために薄いんです。
西沢/リードって声帯と同じですね。それを自分の手でつくってるわけで。1回の定期で4〜5本使うかな。
木立/ローテーションを考えておかないとね。先々を考えて、いつも計算しながらつくっています。スタメンそろえても故障者続出ってこともあるし(笑)。
西沢/フランスものとドイツものでは、リードの選び方も違ってくるんです。ブラームスに、さんさんと輝くような音のリードは使えない(笑)。

息が余る苦しさ、息継ぎの難しさ

─これだけ薄い2枚のリードの間に息を吹き込むのも大変そうです。
西沢/息が入らないから、肺に息が余るんです。10吸ったら8くらい残ってるんじゃないですか。
木立/息が余る苦しさね。空気を吐いてから新しい空気を吸うブレスで、他の楽器にあわせなきゃないから、息継ぎにスピード感がいる。
西沢/でなければ、もう1フレーズ長く吹いて息を捨てちゃうか。
木立/だから気持ちよく演奏できないよね。常にストレスをかかえてるような状態。
西沢/吹いてる最中に、リードの中にゴミが詰まって音出なくなることもあったりするし。もちろん本番前は、必ず歯を磨きますけどね。
木立/リードは湿った状態でないと音が出ないから、ステージには水を入れた容器を持って行くんですよ。
西沢/吸い取り紙とか、掃除道具とか、人によってはドライバーとか、いろんなもの置いてあるんです(笑)。
木立/だから、オーボエ吹きってストレス発散のために、何かにいくよね、お酒に逃げるとか(笑)。西沢君みたいにきちっとしてる人はめずらしいです。
西沢/あんまり真面目にやると心が病んでくから(笑)
木立/あるところまでは几帳面だけど、最終的には「ま、いっか」っていう人が多いかな。
西沢/オーボエの飲み会はすごいねっていわれますよね。うるさいんです(笑)。

*1/ダブルリード
木管楽器に使われるリード。乾燥して薄く削った葦を2枚重ね、楽器の吹口に取り付け、息を吹き込み振動させて音を出す。


オーボエ

右がオーボエ。左はオーボエの仲間、コールアングレ。大きい分、オーボエより音程が5度低い。木立さんはコールアングレも担当している。

ヴァイオリン

西沢さんが自作したオーボエのリード。巻きつけられた糸はカラフル。いつも多数のリードを携帯する。

にしざわ きよひろ 仙台フィル首席オーボエ奏者。東京音楽大学卒業。2002年入団。

きだち いたる 仙台フィルオーボエ奏者。東京音楽大学卒業。1991年入団

第312回定期演奏会(2017年9月15日,16日)プログラムより

このページのトップにもどる