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楽器談義

構成 / 西大立目 祥子

Vol.1 ヴァイオリニストが語るヴァイオリンInterview

コンサートマスター 西本 幸弘  第2ヴァイオリン 木越 直彦

コンサートマスター:西本 幸弘    第2ヴァイオリン:木越 直彦

時代をこえて音楽を奏でてきたヴァイオリンは、まるで人格を持っているかのよう。

1つの音にはセンス、経験、伝統が入り混じる

─ヴァイオリンって、音程を正確に弾くのが相当難しそうです。
西本/確かに、ネック(棹)に、フレット(*1)がないし、難しいといえば難しい。
木越/小さいときから音階を弾いて会得してくしかないんですね。
西本/探り当てる感覚。いまだに探ってますよ(笑)。音程ってコンピュータでこれが正確というのがあっても、そう聴こえないことも多いんです。倍音(*2)があるし、高めの音でも音色が柔らかいと低く聴こえますしね。
木越/物理的に合っているかどうかだけじゃなく、その人なりの音程というのもあります。少し高めの方が好きだとかね。曲によっても変わるし、指揮者から「この音少し低めに」と指示がきたり、コンサートマスターが指示することもあります。
─弦は4本。同じ音でもどの弦で弾くかというのもあるのでしょう?
木越/それもまた指揮者から指示されたり。作曲家が譜面に書き込んでいることもあるし。
西本/その人のセンス、経験、伝統が入り混じるもの。先輩から受け継がれていくものでもあるんです。
木越/そこから仙台フィルカラーが生まれてくるんでしょうね。よくお客さんに、仙台フィルの音は温かいといわれるけど、自分たちが意図的にやってるわけじゃない。
西本/メンバーに温かい人が多いということじゃないかな、オケは人間の集合体だから。みんな違う弾き方をして、お互いがいかに敬い引き出しあうか。ずれてる方が幅が出ることもあります。
木越/ウィーンフィルはみんなソリストのようなレベルだけれど、言い換えればみんな違うということ。それがうまくハモってものすごくいい音になるんです。

古い楽器からじぶんの音を引き出すまで

─やはり、古い楽器をお使いですか?
木越/メンバーはけっこういい楽器使っていますよ。私のは1752年製のニコラ・ガリアーノで、英国の会社の鑑定書がついています。自力で手に入れました(笑)。科学的には解明されていないけれど、何百年も経つ楽器にはオールド独特の音があるんですね。
西本/僕のはモダンといわれる時代の楽器で、トリノで120年ほど前につくられたものです。
木越/手に入れてから、自分の音色になるまで3年はかかったかなあ。
西本/そうですね、3 ~ 4 年かかりますね。引き出すというんですかねえ。
木越/高価なものだし、肌身離さず持ってます。置いて出ると、上の階から水が落ちてきたらどうしよう、なんて考えてしまう(笑)。
西本/いつも持ってるから、たまに持たずに旅行に出たりすると、途中で「あ!忘れてきた!」と一瞬、大あわて。実は東海道線の網棚に忘れたことあるんです(笑)。
木越/湿気が恐いので、いつも湿度計とにらめっこ。畳の上歩くと大体の湿度がわかりますよ。
西本/僕は親指と人差し指をこすり合わせるとわかります。みんなそうじゃないかな。

また誰かの手に渡っていく楽器の歴史を感じて

─古い楽器はメンテナンスが大変でしょう?
木越/手入れは楽器屋さんとの信頼関係があってのこと。2~3カ月に一度は買ったところに持ち込み、みてもらいます。弦の張替えは定期の前なんかに自分でやりますけどね。弓は楽器との相性があって、選ぶのもまた難しい。馬の毛が 使われているので楽器屋さんで張り替えてもらってきて、じぶんで松ヤニを塗るんです。弦は、ナイロン弦を使ってます。耐久性があってクセがないからオケのプレーヤーに多いかな。西本さんは?
西本/僕はガット弦。羊の腸のまわりに金属を巻いてある古いタイプですね。音色の幅があるし、やさしい音がします。高価なので、張替えは財布と相談しながら(笑)。
木越/やはり楽器は私にとっては、いちばん大事なものですね。理想としている音楽を、楽器を通して表現するわけだから。
西本/自分がいなくなった後に弾く人がいると思うと、お預かりしている気分です。歴史に参加させてもらっているような。でも僕の場合はのめり込み過ぎると恐いような気もして、フランクな関係。製作者の名前をとって「アニー」って呼んでます。「アニー、おはよう」─そんな感じ(笑)。人格を持っていますよ。
木越/古い楽器は完成されていて、教えられる感覚。この楽器はこう弾くとこんな音が出るんだ、と発見することが本当に絶えず、毎日のようにありますね。

ヴァイオリン
木越さん所有のニコラ・ガリアーノ。製作年は、モーツァルトの生年より4年さかのぼる。西本さんの所有する後の時代の楽器とくらべると、くびれが細く、表面の隆起が大きい。

にしもとゆきひろ 仙台フィルコンサートマスター。東京藝術大学卒業。英国王立北音楽院に留学し、首席で栄誉付ディプロマ取得。

きごしなおひこ 仙台フィル第2ヴァイオリン。桐朋学園大学音楽学部卒業後、ドイツ・ミュンヘン音楽大学に留学。

第311回定期演奏会(2017年7月21日,22日)プログラムより

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