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楽団員インタビュー~ハーモニーな楽屋~

構成 / 西大立目 祥子

Vol.51 トランペット 戸田 博美Interview

トランペット:戸田 博美

苦しかったとき、自分を支えてくれたのはトランペットでした。
震災を経験し、演奏すること、生きることの意味を考える毎日です。

温泉めぐりを楽しんでいます。長年行けませんでしたからね(笑)。なるべくオンとオフを切り替え、スポーツクラブでも汗を流します。

鼓笛隊でトランペットと出会う

トランペットを始めたのは小学4年のときでした。いっしょに集団登校していた友だちに誘われて鼓笛隊に入ったのがきっかけです。鼓笛隊といっても楽器はトランペットと太鼓だけ。ちゃんと教えてくれる先生もいなくて基礎をきちんと身につけられなかったから、あとで苦労するんですけれどね。

父はサラリーマンで、音楽的な環境が整っていたというわけではないのですが、レコードはたくさんありました。トランペットを始めて間もない頃、家に一人でいてたまたま「運命」をかけたことがあったんです。引き込まれて夢中で全楽章を聴き通し「ベートーヴェンってすごいな!」と感動、クラシックが一気に好きになりました。親がニニ・ロッソのレコードを買ってくれて、聴いて真似をしたりしたのもその頃です。

中学、高校では吹奏楽部に入部し、トランペットを続けました。といっても、中学の部活は、当初まるで運動部みたいで、毎日、柔軟体操に腹筋にランニング(笑)。高校のときはのめり込んで、土日なし、春、夏、冬の休みも一切なし。部活を休むと叱られるのが怖くて、学校も皆勤賞だったんですよ(笑)。

あれは燃え尽き症候群だったんでしょうか、高校を卒業したあとは気力をなくしてぶらぶらしていたんです。ある日、先輩に呼び出されて「おまえからトランペットをとったら何が残るんだ」と一喝され、進学を勧められました。あの一言がなかったら、いまの私はないかもしれません。

障害を乗り越えて再スタートをきる

卒業を間近にひかえてオケのオーディションを受け、仙台フィルに決まったときはそれはうれしかったのですが、つぎの瞬間、不安に襲われました。オケの経験がただの一つもなく、頑張っていこう、という覚悟はありましたが、わからないことだらけでヘコんでばかり、悩みの連続でした。

実は、もう一つ私を苦しめていた大きな悩みは、長年かかえてきた性同一性障害でした。考えた末、自分ができることを精一杯やりたいという思いの中で、治療を受け手術をする決心をしました。公表して新聞やテレビの取材も受けました。これは、私が音楽の世界に身を置き、仙台フィルの事務局や団員の方々からご理解とご配慮をいただいたからできたことです。戸籍上も女性となって初めてドレスを着てステージに立った日のことは忘れられません。心から感謝しています。

もちろん演奏に男性も女性もなく、トランペット奏者としては何も変わっていません。課題をひとつひとつ解決していくだけです。自分のベストを尽くしていきたいですね。

仙台フィルはこれからどんどん変わっていくでしょう。音楽は人間のやること、指揮者が変われば面白いほど変化します。そして演奏会は聴いてくださるお客様がいなければ成り立ちません。どんなステージでも一生懸命、気持ちを込めて演奏していきたいですね。震災を経験して、演奏はもちろんのこと、人間一人では生きられないということを思い知らされました。これからも多くの方々を思いやれる人間として成長できるよう努力していきます。感謝の気持ちを込めて。

とだ ひろみ
尚美学園短期大学を卒業後、東京コンセルヴァトアール尚美音楽社会研究コースで学ぶ。1990年、仙台フィルに入団。1967年3月29日、広島県広島市生まれ。牡羊座、AB型。

第272回定期演奏会(2013年3月15日,16日)プログラムより

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